対象児のプロフィール |
O.H。高2男児。知的障害。
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障害の特性 |
自分の好きな活動に関しては集中できるが、その他のことに関しては長時間集中して取り組むことが苦手。自分の思い通りにならないとカッとなって乱暴な言動をとることがある。怒って暴れ出すと目つきが変わり、落ち着くまではどんな制止も通用しない。
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短期目標 |
全指導場面においてトークン表を用いて上靴を下駄箱に入れることができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
同上。 <理由> これまで自分が整理整頓をしていなかったために、物がなくなったり、友達に壊されたりすることがあった。そうすると自分の行動を振り返るのではなく、一方に怒って暴れることがあり、その事を強く注意されることでより暴力的な行動をとることがあった。自分の持ち物の片づけができるようになることでこのようなトラブルが減少すると考える。また、一度怒り出すと物を壊したり、怒らせた相手に手を出すこともあるので危険であるため、「暴れる」という状態をなくしたい。そこで「自主的に上靴を下駄箱に入れる」ことをきっかけとして「自主的にできる」ためにはどのような指導手続が有効であるか考えてみたい。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
・けんかをした時、怒られた時など精神的に不安定になっている場合 ・急いでいる時 ・何か夢中になっている事がある時 ・お腹がすごく空いている時 このような場合に上靴を下駄箱に片付けなかった。
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指導場面 |
昼の下校時 放課後の下校時 体育(外)に行く時
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指導手続 |
ベースライン ・トークン表は用いない。 ・上靴を下駄箱に入れずに出したままでも注意を促すような声かけは一切しない。 ・出したままの靴もその状態で放っておく。
指導1. ・「下駄箱にくつを入れる」を本児の生活目標に設定する。他にも4つの生活目標を設定し合計5つの生活目標を設定する。毎日,放課後に教師がO.Hと一緒に、できたら「○」できなかったら「×」の印をつけて評価する。その日、5つ全ての目標に「○」がついたら、修学旅行のお小遣い10円プラスとする。(評価表がトークン表となる) ・靴が入っていない場合、声かけで注意を促すような指示は一切しない。 ・出されたままの靴もそのままにしておく。
指導2 評価を毎日するのではなく、「1週間(月〜金)継続して目標を達成できたら1項目につき50円お小遣いを増やす」に設定。その他の手続きについては指導1と同じ。
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教材教具など |
指導1.トークン表(一日に5つの生活目標を立て、その中の一つとして「下駄箱に靴を入れる」という目標を設定する。5つ全ての目標に「○」がついたら「10円」を修学旅行のお小遣いに足すことととする。)
指導2.トークン表(5つの生活目標を立て、その中の一つとして「下駄箱に靴を入れる」という目標を設定する。月曜日から金曜日の一週間、目標が継続して達成されたら「50円」を3学期の校外学習のお小遣いに足すことととする。)
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
指導1.昼の下校、放課後の下校、体育(外)に行く時の合計を全指導場面とし「上靴を下駄箱に入れた」割合をだす。
指導2.指導1に同じ。
グラフ下の文字列 第一系列のタイトル: 上靴を下駄箱に入れる Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4 第二系列のタイトル: Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
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指導期間 |
ベースライン 2004.9.2〜2004.9.10(実質7日間)
指導1. 2004.9.13〜2004.10.6(修学旅行まで)
指導2. 2004.10.18〜2004.2(修学旅行後より3学期の校外学習まで)
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結果 |
<指導1までの結果> 全指導場面において、自主的に上靴を下駄箱に入れるようになった。5つの目標を達成することで得られる「10円」のトークンが動機付けとなっている。しかし、ベースラインの時点で100%に近く上靴を入れるようになっていた。これは、生活環境、学校環境が2学期になり変化し、精神的に安定したことが要因として考えられる。
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考察 |
<指導1までの考察> 本児は一昨年まで通学生であったが、昨年より隣接する施設に入所して生活をしている。そのため、以前のように自由に買い物をしたり、出歩いたり、お小遣いを自由に遣うことができない。そのため、10月6日からの修学旅行において、特に買い物をすることを楽しみにしている。また、持参するお小遣いの金額に対しても強い関心を示している。今回トークンとして用いた「10円のお小遣い」が好子となり標的行動が強化されたと考えられる。 ベースラインにおいて標的行動がすでに100%に近い達成率であったことについては、本児を取り巻く環境が2学期になり変化したことが要因として考えられる。1学期において、本児が「上靴を下駄箱に入れない」背景として「何かがあり精神的に不安定になっている、余裕がない」場合であった。しかし、2学期になり、あるクラスメイトの休学により対人間のトラブルが顕著に減少した。それにより精神的に安定したことがトークンを用いなくても標的行動をほぼ達成していた要因として考えられる。(嫌子の消失による強化)
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ビフォー
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
昼の下校時 放課後の下校時 体育(外)に行く時 |
上靴を下駄箱に入れる |
すぐに次の行動に移ることができない↓ |
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アフター
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
昼の下校時 放課後の下校時 体育(外)に行く時 |
上靴を下駄箱に入れる |
修学旅行のお小遣いが10円増える↑ |
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記入日時 2006/02/24/07:17:40
No.194
記入者 管理者
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