2004-21



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「たすけてくださいカード」を使う
概 要
組み立て課題のなかで部品が足らなくなったときにTに「たすけてくださいカード」を提示する。

対象児のプロフィール
中学部1年

諸検査結果
大田のステージ:3−1
CARS:37

障害の特性
自閉症

指導者
HY

長期目標
写真や絵、サインを用いて主体的なコミュニケーションする場面を増やす。

短期目標
課題学習の中で、「たすけてくださいカード」を使って、教師に要求を伝える。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
ステップ1
課題学習中に、「たすけてくださいカード」をすぐそばにいる教師に見せて、部品の不足を伝えることができる。

ステップ2
課題学習中に、少し離れた場所(2M)にいる教師のところへ行って注目を引いてから(肩を軽くたたく)「たすけてくださいカード」を見せて、部品の不足を伝えることができる。

ステップ3
課題学習中に、少し離れた場所(2M)にいる教師のところへ行って注目を引いてから(肩などに軽く触れる)、ポケットから出した「たすけてくださいカード」(ブックになっている)を見せて、部品の不足を伝えることができる。

ステップ4(般化場面の1.にあたる)
課題学習の自立課題と自立課題の間の休み時間にパズルをしている場面でパーツがうまく入らないときに、少し離れた場所(2M)にいる教師に「たすけてくださいカード」(ブック)を見せて、援助を求めることができる。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
足らない部品があると、Tの方を振り返って「ウッ」と声をあげるときもあるが、未完成のまま次の課題に移ってしまうことがある。
小学部時代に、給食指導の時にジャムの袋を開けてほしいときに「肩をとんとんする」を指導していて、その時にはできていた、とのこと。現在(中1)では、ジャムの袋は自分で開けられるようになってきたので、給食時に上述のような指導は行っていない。

般化場面
1.課題学習中、休み時間にパズルがうまく入らないときに、「たすけてくださいカード」を見せて援助を求めることができる。
2.「国数」の時間、パソコンを使った学習の場面でうまくいかないときに、「たすけてくださいカード」を使って教師に援助を求める。
3.学校生活のいろいろな場面で、困った時に「たすけてくださいカード」を使って援助を求める。

指導場面
課題学習の時間(週2回月・水)

指導手続
ステップ1
・1セットの課題(カゴ4つ)の中に部品の足らないも のを2つ用意する。(1授業時間2セット)
・作業台の右側に「たすけてくださいカード」を置く
・組み立て作業中に部品が足らなくなると、カードを教 師に示す
・教師から部品をもらって作業を続ける

ステップ2
・教師は、生徒から2Mくらい離れた位置で背を向けている。(以下、ステップ1と同じ)

ステップ3
・「たすけてくださいカード」は、名刺半サイズにして日常生活で使っている「行き先カード」と中に綴じたものを使う。(ブック)
・カードは、ポケットの入れて必要なときに出し入れする。(以下、ステップ1に同じ)

ステップ4(般化場面1.)
・自立課題を行う場所とは別の休憩場所を設ける。
・自分で選んだパズルや教師から渡されたパズルを組み立てているとき、パーツが入らなくなった場面でポケットから「たすけてくださいカード」(ブック)を出して教師に求める。
休み時間なので、教師は生徒の方を向いていることが多いため、ここではカードは教師に向けて示せばよいこととする。


詳細はABC分析参照

教材教具など
ステップ1、2
・課題セット(課題の入ったカゴの4段積み)
・「たすけてくださいカード」

ステップ3
・「たすけてくださいカード」(小型化したもの、「行き先カード」と一緒にリングで綴じた物)

ステップ4
・課題学習と課題学習の間の休憩場所
・いろいろなパズル

達成基準
課題学習の時間の中で、4試行中4回ともプロンプト無しで成功すれば満点(100%)とする。満点が3回(3日)連続達成できれば標的行動は達成されたとする。得点は、プロンプト無しでできれば25点、プロンプトがあった場合は0点とする(25×4=100)。

その日の課題内容等によっては、授業終了までに4回できないときがあるため実施回数中の成功回数(0〜100%)を記録する。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
(指導場面)ビデオ撮影

課題学習場面で、部品が足りない状況を設定し、「たすけてください」カードを教師に提示して伝えることができたかどうかを記録する。

グラフ下
第一系列のタイトル: 困った場面での助けてくださいカードの提示
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル:
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
2004年9月1日(水)〜2005年1月12日(水)

結果
ステップ1:達成
ステップ2:達成
ステップ3:達成
ステップ4:達成

考察
・ステップ1〜3とも、指導を初めとときに何回かプロンプトを受ければ成功していることから、本生徒の場合、小学部時代に学習していたカードによるコミュニケーションがかなり身に付いているものと考えられる。
・ステップ3で小型化・携帯化した「たすけてくださいカード」が使えるようになったことで、課題学習以外の場面での活用が期待できるようになった。
・教師が少し離れた場所にいるても使える、ポケットから出し入れして使える、綴じたカードの中から「たすけてくださいカード」をめくって示すことができるなど、
生徒の身につけているスキルを活用して、いろいろな場面への般化やさらに複雑なカードコミュニケーションも期待できる。
・ステップ4は、課題学習の中ではなく、課題学習と課題学習の間の、休憩時間に遊びで行うパズルの組み立ての場面で、これまでの「足らない物をください」という要求から「(パズルが)うまく入らないので、手伝ってください(たすけてください)」という要求の意味でカードを使う。指導としては「場面の般化」である。この般化が実現したことで、本生徒が日常生活で困ったり、援助がほしいくなったりしたときに、「たすけてくださいカード」が援助を求める有効な手段になる可能性が広がったといえる。

ステップ1
A:先行条件 B:行動 C:結果
課題学習中部品が不足している 正反応:A「たすけてくださいカード」を教師に差し出す
誤反応:B未完成の課題(実物)を教師に差し出す       C未完成のまま終了箱に入れる
A「よろしい」と笑顔で褒め、不足部品をすぐ渡す
B5秒待つ→「どうするのかな?」という間接言語とサイン→「カード」のサイン
C箱に入れるのを止める→5秒待つ→「どうするのか」という間接言語とサイン→「カード」のサイン

ステップ2
A:先行条件 B:行動 C:結果
部品が足らないとき
教師が少し離れた(2M)場所で、生徒に背を向けている
教師の肩に触れてから「たすけてくださいカード」を提示すると 部品がもらえる(↑)

ステップ3
A:先行条件 B:行動 C:結果
部品が足らないとき
教師が少し離れた(2M)場所で、生徒に背を向けている
「たすけてくださいカード」(ブック)をポケットから取り出して、教師の肩に触れてから「たすけてくださいカード」を提示すると  

ステップ4
A:先行条件 B:行動 C:結果
課題の休み時間、パズルをしていてパーツがうまく入らないとき 「たすけてくださいカード」(ブック)をポケットから取り出して、教師に提示すると 援助してくれる(↑)
パズルが完成する(↑)


記入日時 2006/02/24/14:56:01  No.226
記入者 管理者  E-Mail

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