2004-41



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手順書を使って作業から片付けの一連の活動が一人でできるための指導
概 要
2学期に入り、紙工作業形態が整ってきたことに伴って学習内容の理解が進み、作業が一人で取り組めるようになってきた。しかし作業を終えて、片付け・掃除に移る隙間の時間帯をきっかけにしてその後の活動が十分に実行できなくなることがあった。
そこで手順書を使って,片付けから教室移動にいたるまでを自立できるように指導を行いたいと考えた。

対象児のプロフィール
中3女子。自閉症。

諸検査結果
SM社会生活能力検査:社会生活年齢4-8。 身辺自立5-11、移動3-9、作業7-4、意思交換3-9、集団参加3-1、自己統制4-3 (H15.3.30)

障害の特性
社会生活上のルール理解の困難(社会とのかかわり)
過度の不安感 (心理的な安定)(環境の把握)
こだわり (心理的な安定)

指導者
kam

長期目標
スケジュールや手順書にしたがって、学習活動をする。

短期目標
スケジュールと手順書にしたがって活動の終了後すぐに片づけができるようになる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
・手順書にしたがって,作業終了後30秒以内に片づけを始める。
・手順書にしたがって,片づけ→作業記録ノートの記入→終わりの挨拶→着替え→教室に移動までの一連の学習活動を一人で行う。

標的行動とこれを選んだ理由
作業中は作業内容の理解に伴って自立的な活動が確立してきたものの,作業終了後は他の生徒と一緒に片づけ・掃除活動をする事が難しく逸脱行動が見られる。また教室移動の途中でスクールバスの発着を見たいということが強いこだわりとなり、その場に釘付けとなることがある。
これら2つの理由から、作業終了後から本人に合った片づけ・掃除活動を用意し,作業終了から教室に戻るまでの間手順書を使うことで自立的活動を養っていきたいと考えた。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
スケジュールや手順書を見ると落ちつく。
短い文章によるスケジュールを理解するが,毎日同じことだとスケジュールを確認したりするのは面倒くさくなることがある。
自分の行動や制作物に訂正を求められるとパニックになりやすい。
授業中いったん教室を出ると再び入ることは難しい。
スクールバスの発着を見ることにこだわりがある。

般化場面
指導者が替わった場合
家庭での遊び・片付け場面を設定して

指導場面
紙工作業学習の時(週2回木金)

指導手続
【ベースライン期】
〔生徒全員に対する一斉指導〕
前面黒板に3種類の表示をすることで,今日の授業の流れや作業内容を視覚的に教える。
1,「今日の授業の流れ」の表示
じゅんび/はじめのあいさつ/話をきく/さぎょう/かたづけ・そうじ/記録ノート/作品鑑賞/おわりのあいさつ//これらのカードを表示し,進行にしたがってはずしていく。
2,「準備・片づけ」の担当表示
6〜7工程に分けた作業の準備・片づけ割り当て表を表示する。所定の場所に道具を取りに行ったり,使った道具を返しに行く活動をする。
3,「今日の作業内容の発表」
今日は何を作るかどんな作業をするか図示して話をする。
〔個別の手順書による指導〕
(手順書例)
ミキサーがけ ()
ミキサーがけ () 
ミキサーがけ ()
ラミネートはがし ()
ラミネートはがし ()
かたづけ・そうじ
()欄は所要時間約6〜8分の作業,本人の「できました」という申請により,教師にシールをもらってはるか,教師に丸を入れてもらうようにしていた。
(確実なチェックはできていなかった。本人からの申請はほとんどなかったので〉   
また()チェックは紙工作業のみでその他の授業内活動には適用していなかった。

【指導期】
〔生徒全員に対する一斉指導〕
ベースライン期と同じ
〔個別の手順書による指導〕
(手順書例)M
じゅんび エプロン()
     ミキサーサー()
4の席にいく()
□の作業をする()()()
□の作業をする()()()
□の作業をする()()()
かたづけ・そうじ()
記録ノート()
おわりのあいさつ()
着がえ()
教室に行く()
先生バスを見ていいですか?()
・規定の作業工程が終了すると、「先生,見てください」というカードをつくり補助的に使用して,言葉でその都度教師に報告をしてチェックを受けるように促す。
→チェックを受けて条件を満たしていたら合格シールをもらって手順書の中の()欄にシールを貼る。

教材教具など
作業手順書
チェックシール
紙工作業道具,タイマー
片づけ課題
片づけ手順書

達成基準
・作業終了後30秒以内に片づけを始めることができる。
・片づけをはじめてから教室に帰るまでに教師が出したプロンプトの回数の減少が必要。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
作業を終了し片づけを始めるまでの時間を計る。
片づけをはじめてから教室に帰るまでに出したプロンプト数を数える。
逸脱行動がありガイダンスをしたときはプロンプト数の最大値10とする。

グラフの下の文字列
第一系列のタイトル: 片づけ開始までの所要時間
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル: 片づけから教室に帰るまでのプロンプト数
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
ベースライン期:9/16、17,24,30,10/1(計5回)
    指導期:10月から通常(木,金)*学校行事のため変更あり

結果
作業終了後の片付けは,指導期に入って3回目以降連続で30秒以内に片づけができた。1月以降の記録ではプロンプト数0。
教室移動については、逸脱行動のためガイダンスをしたのは10/21,1/13
1/13は(冬休み明け)
プロンプトは減少傾向が見られた。
指導者のkamまたはT2がランダムにプロンプターをした。

考察
ベースライン期の掃除は床の掃き掃除を主に行っていたが,箒を持ってうろうろするか,教室の隅でいるなどの様子が見られ,教師の声かけによって数秒箒を動かす程度だった。
指導期では片づけ課題を用意して取り組むと何をすべきかがよくわかったようだ。
教室移動については、1階の作業室を出て、車庫のすぐそばでバスを見ることが強い好子となるので、不安が残る。そこで島宗先生の提案により、バス発着のビデオを使いことにした。その結果は現在まだ出ていないが、ビデオも好子として有効であり、クラス担任としては期待しているところである。

参考にした先行研究や事例など
メモ
多動傾向
注目を浴びたいという欲求


Mは片づけが嫌い
A:先行条件 B:行動 C:結果
作業が終わる。 席を立って教室の隅に移動
人を避けてうろうろする。
片づけをしなくて済む。
先生は他の生徒の片づけを手伝う。

Sバスを見に行けるんだったら,すぐに片づけをしようと思う。
A:先行条件 B:行動 C:結果
作業が終わる。 手順書を見て,片づけをする。 作業室を出て,スクールバスを見に行ける。

下校時,塾送迎バス発車時刻に遅れる
A:先行条件 B:行動 C:結果
授業が終わって作業室の外に出る。
「やったー」と,開放感を感じて,着替えをする前にスクールバスを見に行く。
やがて授業を終えた友達が,そばを通り過ぎてもバスを見始めると、次の行動に移ることが出来ない。無理に連れて行こうとしても床に腹這いになって抵抗する。  

下校時,塾の発車時刻に間に合う。
A:先行条件 B:行動 C:結果
作業室を出て着替えをする。下校モードに入る。 手順書を見て,後でスクールバスを見ても良いことがわかる。 3階に移動する。
3階のベランダからバスを眺める。
あまりおもしろくないので,間もなく隣の教室に入ってビデオを見る。
担任は時間通り帰りの会するためにMを隣教室から自分の教室に呼び寄せることができるのでまあいいかと思う。
塾送迎バスの発車時刻に間に合う。


記入日時 2006/02/23/17:58:57  No.186
記入者 管理者  E-Mail

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