2004-46



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課題コーナーで決められた課題ができる
概 要
写真カードで遊び道具の要求ができるようになった自閉症生徒に、決められた課題をすると遊びができることを教え、自立的な課題遂行行動を獲得させることを目的とする。

対象児のプロフィール
TK。高2男子。自閉症

諸検査結果
太田のStage\x{2160}-3 

新版S- M式社会生活能力検査(2003.4.15) 身辺自立2-6,移動2-4,作業3-3,意志交換2-5,集団参加1-10 自己統制1-8 (社会生活年齢2-4)

障害の特性
コミュニケーション/環境の把握

指導者
MH

長期目標
20分以上落ち着いて一人で過ごすことができる。

短期目標
決められた2種類の課題に一人で取り組むことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
標的行動:写真カードで好きな遊びを要求する前に、決められた課題を自分で取って遂行できる。

これを選んだ理由:
・対象生徒には、壁に向かった机の周りを衝立で囲んだ個別のコーナーを教室に設置しており、現在は主に好きな課題(遊び)をして過ごす場所となっている。
・事例9−2で示したとおり、写真を持って好きな2種類の遊びの要求ができるようになり、個別のコーナーで好きな遊びをして過ごしている。
・決められた課題の自立的な開始、遂行は、現場実習場面で本生徒の課題となっている。
・一人で遊びや作業をして過ごせることは、本生徒の長期目標である。
・課題遂行の後の好きな遊びを好子として、自立的に課題を開始できるかどうかを検討したい。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・決められた課題を教師の援助なく自立的に開始することはできず、教師が一つひとつの課題を渡して取り組ませている。
・渡された課題は、慣れた課題であれば最後までひとりでこなすことができる。
・課題が終了すると、「できました」と言うことができる。
・できた課題を元の場所に片付けようとすることもあるが、定着していない。
・終了箱使用の指導は受けていない。

般化場面
・生活の授業中における個別学習場面
・校内実習における作業場面
・校外実習における作業場面

指導場面
(1)給食後の自由時間
(2)登校後の自由時間

指導手続
・技能的に一人で遂行可能な課題を準備する。

[指導手続き1]
(1)机の左側に課題を置く。好きな遊びの写真カードが入ったかごをその横に置く。
(2)課題を取るように指さしプロンプトを出す。取れなければ身体的ガイダンスで取らせる。
(3)課題を始めるのを待つ。始めなければ指さしで指示する。
(4)課題が終わったら、右側の終了箱に入れさせる(身体的ガイダンス→指さし→フェイドアウト)。
(5)遊びの写真カードを指さす。
(6)生徒がカードを取らなければ、指導者が手を出す。
(7)写真カードを持って「ください」と要求できたら、ペグ(またはビー玉)を渡す。

・プロンプトは徐々にフェイドアウトしていく。

[指導手続き2]
対象生徒の左側に3段ボックスを設置。最上段に課題、中段にビー玉の写真を置く。その他の手続きは変更しない。

教材教具など
・ボール紙に洗濯ばさみをはさむ課題やスナップ留めなど、対象生徒が無理なくできる課題
・ペグさしとビー玉落としの写真カード

達成基準
プロンプトなしで課題を開始し、課題が終了してから遊びの要求ができることが5回続いたら達成とする(15点が5日続く)。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
次の各段階について記録を取る。
一人でできた(3点)、指さしでできた(2点)、身体的ガイダンスでできた(1点)

(1)課題を取る
(2)課題を最後までする
(3)終了した課題を終了箱に入れる
(4)遊びの写真カードを取る
(5)写真カードを持って、「ください」と要求する

(1)から(3)段階の自発率を%で表す。

グラフ下

第一系列のタイトル: 自発率の推移
Intervention1: 給食後の自由時間・机の上 Intervention2: 登校後の自由時間・机の上 Intervention3: 登校後の自由時間・3段ボックス設置
第二系列のタイトル:
Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
12月6日〜

結果
指導手続き(1)[机の上にかごを並べる]

・段階(5)(写真カードを持って、「ください」と要求する)  
1セッション目から自発できた。

・段階(2)(課題を最後までする) 
言語指示を要したのは、2,3,5セッションのみで、後は指示がなくても最後まで完成できた。


・段階(4)(遊びの写真カードを取る) 
9セッション目から安定して自発できるようになった。


・段階(1)(課題を取る)と(3)(終了した課題を終了箱に入れる) 
4セッションまで身体的プロンプトを要した。5セッションからは、指さしまたは言語指示でできるようになった。14セッション目に、始めてひとりで片づけ箱に課題を片付けた。15セッション目から、自分で課題を取れることが多くなったが、時々ビー玉の写真を先に取って要求することがあり、定着しなかった。

指導手続き(2)[3段ボックス設置]

・段階(1)(課題を取る)、段階(4)(遊びの写真カードを取る) 指さしプロンプトを要した。遊びの写真カードを先に取ろうとすることが多かった。課題を片付けた後、写真を取らずにじっとしていることが多かった。

・段階(3)(終了した課題を終了箱に入れる) 課題終了後10秒待ち、言語プロンプトを出した。言語プロンプトがあれば、すぐに片付けることができた。プロンプトなしで自発できることもあった。

考察
指導手続き(1)[机の上にかごを並べる]

・遊びを要求する前に課題を取ることと、片付け箱に終わった課題を入れることが定着していない。

・長机の上に課題と写真カードを並べるこの形態では、目に留まった方を手に取る傾向がみられた。課題机の左に3段ボックスを設置して指導することで、上から順番に取るという約束が理解しやすくなるかもしれない。

・片付け箱は、「片付けなさい」の言語指示があれば使えるようになってきた。言語プロンプトを遅らせて、自発を促したい。

指導手続き(2)[3段ボックス設置]

・遊びの要求カードを「次の活動」という意味に使うことは適切でなかった。生徒の混乱を避けるためには、「やらなければならない課題の場所」と「遊びカードの場所」を明確に分けることが必要である。


机の上にかごを並べた環境設定

3段ボックスを利用した環境設定
記入日時 2006/02/21/14:58:33  No.178
記入者 管理者  E-Mail


記入日時 2006/02/21/15:01:20  No.179
記入者 管理者  E-Mail

課題コーナーで決められた課題ができる
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
標的行動:課題コーナーで、2つの課題を順番に取って遂行し、片付けることができる。

指導場面
登校後の自由時間

指導手続
STEP1 課題1種類
(1)対象生徒の左側に3段ボックスを置く。最上段に課題を置く。
(2)生徒の右側に終了箱を置く。
(3)課題コーナーへのトランジッションアイテムを渡す。
(4)課題コーナーで課題を取るまで待つ。10秒経っても取らなければ、指さしで指示する。
(5)課題が終わったら、右側の終了箱に入れさせる(遅延言語プロンプト:10秒)。
(6)遊びの選択ボードを見せる。
(7)生徒が写真カードを持って「ください」と要求できたら、要求した遊びを渡す。

STEP2 課題2種類 
(1)対象生徒の左側に3段ボックスを置く。最上段と中段に課題を置く。
(2)生徒の右側に終了箱を置く。
(3)課題コーナーへのトランジッションアイテムを渡す。
(4)課題コーナーで上段の課題を取るまで待つ。10秒経っても取らなければ、指さしで指示する。中段の課題を取ったときは、上段の課題を指さして取らせる。
(5)課題が終わったら、右側の終了箱に入れさせる(遅延言語プロンプト:10秒)。
(6)中段の課題を取らせる(身体的ガイダンス→指さし→フェイドアウト)。
(7)課題が終わったら、右側の終了箱に入れさせる(遅延言語プロンプト:10秒)。
(8)遊びの選択ボードを見せる。
(9)生徒が写真カードを持って「ください」と要求できたら、要求した遊びを渡す。

達成基準
プロンプトなしで課題を開始・遂行し、課題が終了してから終了箱に片付けることが5回続いたら達成とする(自発率100%が5回続く)。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
次の各段階について記録を取る。
一人でできた(◎)、指さしでできた(○)、身体的ガイダンスでできた(△)
自発率を%で表す。
一人でできた項目数/全項目数×100=自発率

STEP1
(1)課題を取る
(2)課題を最後までする
(3)終了した課題を終了箱に入れる

STEP2
(1)課題を取る
(2)課題を最後までする
(3)終了した課題を終了箱に入れる
(4)次の課題を取る
(5)課題を最後までする
(6)終了した課題を終了箱に入れる

グラフ下
第一系列のタイトル: 自発率の推移(STEP1)
Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
第二系列のタイトル: 自発率の推移(STEP2)
Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4

指導期間
2月17日〜3月17日

結果
STEP1(課題1種類)

徐々に片付け箱に指示が不必要となり、自発率100%が5日続いた。

STEP2(課題2種類)

1〜3セッションでは(4)次の課題を取る、(6)終了した課題を終了箱に入れる段階で指示を必要としたが、4セッション目で、指示がなくても自発できた。

*春休みに入ったため、指導を終了した。

考察
・身体的プロンプトから言語プロンプト、さらに遅延言語プロンプトという段階で指導をすることによって、「片付け箱の使用」という新しい行動を獲得させることができた。
・次の課題の場所を明確に示すことによって、自発的な課題の開始が可能となった。対象生徒の理解レベルを考慮した環境設定が必要である。  


記入日時 2006/02/27/17:06:43  No.254
記入者 管理者  E-Mail

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