概 要 |
写真カードで遊び道具の要求ができるようになった自閉症生徒に、決められた課題をすると遊びができることを教え、自立的な課題遂行行動を獲得させることを目的とする。
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諸検査結果 |
太田のStage\x{2160}-3
新版S- M式社会生活能力検査(2003.4.15) 身辺自立2-6,移動2-4,作業3-3,意志交換2-5,集団参加1-10 自己統制1-8 (社会生活年齢2-4)
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長期目標 |
20分以上落ち着いて一人で過ごすことができる。
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短期目標 |
決められた2種類の課題に一人で取り組むことができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
標的行動:写真カードで好きな遊びを要求する前に、決められた課題を自分で取って遂行できる。
これを選んだ理由: ・対象生徒には、壁に向かった机の周りを衝立で囲んだ個別のコーナーを教室に設置しており、現在は主に好きな課題(遊び)をして過ごす場所となっている。 ・事例9−2で示したとおり、写真を持って好きな2種類の遊びの要求ができるようになり、個別のコーナーで好きな遊びをして過ごしている。 ・決められた課題の自立的な開始、遂行は、現場実習場面で本生徒の課題となっている。 ・一人で遊びや作業をして過ごせることは、本生徒の長期目標である。 ・課題遂行の後の好きな遊びを好子として、自立的に課題を開始できるかどうかを検討したい。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
・決められた課題を教師の援助なく自立的に開始することはできず、教師が一つひとつの課題を渡して取り組ませている。 ・渡された課題は、慣れた課題であれば最後までひとりでこなすことができる。 ・課題が終了すると、「できました」と言うことができる。 ・できた課題を元の場所に片付けようとすることもあるが、定着していない。 ・終了箱使用の指導は受けていない。
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般化場面 |
・生活の授業中における個別学習場面 ・校内実習における作業場面 ・校外実習における作業場面
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指導場面 |
(1)給食後の自由時間 (2)登校後の自由時間
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指導手続 |
・技能的に一人で遂行可能な課題を準備する。
[指導手続き1] (1)机の左側に課題を置く。好きな遊びの写真カードが入ったかごをその横に置く。 (2)課題を取るように指さしプロンプトを出す。取れなければ身体的ガイダンスで取らせる。 (3)課題を始めるのを待つ。始めなければ指さしで指示する。 (4)課題が終わったら、右側の終了箱に入れさせる(身体的ガイダンス→指さし→フェイドアウト)。 (5)遊びの写真カードを指さす。 (6)生徒がカードを取らなければ、指導者が手を出す。 (7)写真カードを持って「ください」と要求できたら、ペグ(またはビー玉)を渡す。
・プロンプトは徐々にフェイドアウトしていく。
[指導手続き2] 対象生徒の左側に3段ボックスを設置。最上段に課題、中段にビー玉の写真を置く。その他の手続きは変更しない。
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教材教具など |
・ボール紙に洗濯ばさみをはさむ課題やスナップ留めなど、対象生徒が無理なくできる課題 ・ペグさしとビー玉落としの写真カード
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達成基準 |
プロンプトなしで課題を開始し、課題が終了してから遊びの要求ができることが5回続いたら達成とする(15点が5日続く)。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
次の各段階について記録を取る。 一人でできた(3点)、指さしでできた(2点)、身体的ガイダンスでできた(1点)
(1)課題を取る (2)課題を最後までする (3)終了した課題を終了箱に入れる (4)遊びの写真カードを取る (5)写真カードを持って、「ください」と要求する
(1)から(3)段階の自発率を%で表す。
グラフ下
第一系列のタイトル: 自発率の推移 Intervention1: 給食後の自由時間・机の上 Intervention2: 登校後の自由時間・机の上 Intervention3: 登校後の自由時間・3段ボックス設置 第二系列のタイトル: Baseline: ベースライン Intervention1: 指導方法1 Intervention2: 指導方法2 Intervention3: 指導方法3 Intervention4: 指導方法4
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結果 |
指導手続き(1)[机の上にかごを並べる]
・段階(5)(写真カードを持って、「ください」と要求する) 1セッション目から自発できた。
・段階(2)(課題を最後までする) 言語指示を要したのは、2,3,5セッションのみで、後は指示がなくても最後まで完成できた。
・段階(4)(遊びの写真カードを取る) 9セッション目から安定して自発できるようになった。
・段階(1)(課題を取る)と(3)(終了した課題を終了箱に入れる) 4セッションまで身体的プロンプトを要した。5セッションからは、指さしまたは言語指示でできるようになった。14セッション目に、始めてひとりで片づけ箱に課題を片付けた。15セッション目から、自分で課題を取れることが多くなったが、時々ビー玉の写真を先に取って要求することがあり、定着しなかった。
指導手続き(2)[3段ボックス設置]
・段階(1)(課題を取る)、段階(4)(遊びの写真カードを取る) 指さしプロンプトを要した。遊びの写真カードを先に取ろうとすることが多かった。課題を片付けた後、写真を取らずにじっとしていることが多かった。
・段階(3)(終了した課題を終了箱に入れる) 課題終了後10秒待ち、言語プロンプトを出した。言語プロンプトがあれば、すぐに片付けることができた。プロンプトなしで自発できることもあった。
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考察 |
指導手続き(1)[机の上にかごを並べる]
・遊びを要求する前に課題を取ることと、片付け箱に終わった課題を入れることが定着していない。
・長机の上に課題と写真カードを並べるこの形態では、目に留まった方を手に取る傾向がみられた。課題机の左に3段ボックスを設置して指導することで、上から順番に取るという約束が理解しやすくなるかもしれない。
・片付け箱は、「片付けなさい」の言語指示があれば使えるようになってきた。言語プロンプトを遅らせて、自発を促したい。
指導手続き(2)[3段ボックス設置]
・遊びの要求カードを「次の活動」という意味に使うことは適切でなかった。生徒の混乱を避けるためには、「やらなければならない課題の場所」と「遊びカードの場所」を明確に分けることが必要である。
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