概 要 |
本児は,支援者に援助要求をすることが少ない。日常生活で困った時に援助要求を示すことができず,行動が止まってしまったり,手段が分からず間違ったまま自分でやり遂げてしまうことが多い。また,「何がおかしんえ?」と言うと周りの人が注目してくれることを経験から知っているので,その言葉を発して援助を求めることもある。獲得している要求手段は,課題学習の場面で不足している部品があると,「ください」と言って支援者に要求することと,生活の様々な場面で手伝ってほしい時に「してください」と言って支援者に要求することの2つである。 援助要求の方法を獲得し,色々な場面で援助要求をすることが増えていければと思っている。
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対象児のプロフィール |
Mさん 高等部1年生 女児 自閉症
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諸検査結果 |
PEP-R:2歳9ヶ月(平成15年10月) S-M社会生活能力検査:4歳2ヶ月(平成18年9月)
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障害の特性 |
・こだわり:何でも残さず空っぽにしてしまいたい。 ・コミュニケーション:日常よく使う言葉は理解している。語彙数は少ないが,自分から1語文(おいしい,すずしい,かゆい,いや,など)で,感じたことを伝えることがある。 ・変化への対応:指示されたり訂正されたりすることに抵抗があり,支援者に支援されることを拒むことがある。
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長期目標 |
・給食の時間に,「減らしたい」カードを教員に手渡しして,苦手な食べ物を減らすことができる。
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短期目標 |
・苦手な食べ物が出た時に,教員に「減らす?」と言葉をかけられると,「減らしたい」カードを教員に手渡しして,減らしたいことを要求することができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
・苦手な食べ物が出た時に,教員に「減らす?」と言葉をかけられると,「減らしたい」カードを教員に手渡しして,減らしたいことを要求することができる。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
本児は,給食時に苦手な食べ物(あんかけ,八宝菜などのドロドロした食べ物,トマト味の食べ物,お肉など)たでた時,表情が固まり嫌々ながらも少しずつおかずを食べ始めることが多い。お皿の中の苦手な食べ物が少なくなってくるとかきこんで食べ,ほとんど毎回全て食べ終えている。けれど,勢いよくかきこんで食べてしまい,吐いてしまったこともあった。途中で,「減らす?」と言葉をかけられると,「イヤイヤイヤ」と言って拒否をすることが多いが,教員の表情を伺いながら苦手な食べ物を減らすこともある。
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指導手続 |
・「減らしたい」カードを教員に手渡す。 机上に,お椀(残食を入れるためのもの)とお箸と「減らしたい」カードを置いておく。苦手な食べ物と好きな食べ物を計4回,食べ終わる毎に順番に出していく。明らかに苦手な食べ物がある(食べるスピードが極端に遅かったり,表情が固まり嫌々食べていたりする時)のに「減らしたい」カードを手渡しすることができない時は,「減らす?」と言葉をかけ,教員が「減らしたい」カードを指さししてカードに注目させ,指導者が手を出して対象生徒にカードを手渡すことを促す。「減らしたい」カードを対象生徒が教員に渡し,苦手な食べ物を減らすことができたら賞賛する。
・指導場面では… 1.苦手な食べ物を机に置き,「どうぞ」と言って食べることを促す。 2.好きな食べ物を机に置き,「どうぞ」と言って食べることを促す。 3.苦手な食べ物を机に置き,「どうぞ」と言って食べることを促す。 4.好きな食べ物を机に置き,「どうぞ」と言って食べることを促す。
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教材教具など |
・「減らしたい」カード:残食を捨てる様子の写真をカードにしたもの。 ・お椀:残食を入れるもの。 ・お箸
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達成基準 |
指導場面で,「減らす?」と言葉をかけられると,プロンプトなしで「減らしたい」カードを教員に手渡しすることが3日間連続してできた時,達成とみなす。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
試行ごとに,次の基準で記録を行う。 ・「減らす?」と言葉をかけられるとプロンプトなしで「減らしたい」カードを教員に手渡す:○ ・「減らす?」と言葉をかけられるとプロンプトありで「減らしたい」カードを教員に手渡す:×
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結果 |
指導場面においては,3日目に2回実施した中で2回とも,プロンプトなしで自分から「減らしてください」カードを教員に手渡すことができた。3日目以降,連続して3日間,2回実施した中で2回ともプロンプトなしで自分から「減らしてください」カードを教員に手渡すことができたので,目標達成となった。 般化場面においては,給食時に苦手な食べ物が時々しかでないこともあって,2007年3月になっても目標達成には至っていない。苦手な食べ物がでた時に,プロンプトありで「減らしてください」カードを手渡して,減らすことはできた。
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考察 |
指導場面では,「減らしてください」カードに注目するよう,カードを指さししてプロンプトをだすと,カードの意味を理解し,自分から教員にカードを手渡すことができた。苦手な食べ物を本人が極端に嫌いな食べ物にしたので減らしてほしい気持ちが強くなり,目標達成に至ったのが早かったと考えられる。 般化場面では,給食時に苦手な食べ物が時々しかでないこともあって,2007年3月になっても目標達成には至っていない。また,給食のメニューの中でも特に苦手な八宝菜の時などはプロンプトありで減らすことができたが,そこまで苦手でなければ空っぽにしてしまいたい気持ちが勝り,無理にかきこんで食べているのが現状である。 プロンプトなしでカードを手渡すまで至っていない理由として,給食のメニューに極端に嫌いな食べ物があまりでないことと,プロンプトの出し方に工夫がいると考えられる。給食の場面では教員の人数が確保できないため,指さしのプロンプトしか行うことができなかった。今後は教員の人数を確保し,本人の後ろから身体的ガイダンスで「減らしてください」カードを手渡しできるように指導していきたいと考えている。
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指導前
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
苦手な食べ物がでた時 |
残さず食べる |
我慢できず食べ物を吐き出す(↓) |
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指導後
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
苦手な食べ物がでた時 |
「減らしてください」カードを教員に手渡す |
苦手な食べ物を減らすことができる(↑) |
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第一系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 課題場面
Intervention2: 般化場面
Intervention3: 指導手続き3
Intervention4: 指導手続き4
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第二系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
Intervention2: 指導手続き2
Intervention3: 指導手続き3
Intervention4: 指導手続き4
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記入日時 2006/10/12/16:43:20
No.287
記入者 h.ayako
E-Mail
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