概 要 |
本児は今までに見たいビデオがあるときには、ビデオの写真カードを教員に渡し、ビデオをつけてもらうということができている。ことばは、主として単語の頭文字や単語の中の一文字や、本児特有の言語(2語程度)を発声することができる。また、身振りやクレーンハンドで相手に要求を伝えようとする場面がみられるが、確実ではない。そこで自分の要求を相手に伝える手段の一つとしてことば「おねがい」のついた写真カード(おねがいカード)を使っていくことを考えた。
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諸検査結果 |
SM社会生活能力検査結果:2歳5ヵ月( 9月22日実施) K式
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障害の特性 |
身体機能が未熟で指先を使うなどの細かい作業は苦手である。
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長期目標 |
困ったときに、おねがいカードで援助要求することができる。
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短期目標 |
朝の着替えの時に、おねがいカードを教室内にいる教員に見せてポロシャツのボタンをはずしてもらうことができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
朝の着替えの時に、おねがいカードをすぐそばにいる教員に渡してポロシャツのボタンをはずしてもらうことができる。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
本児は着替えの時にポロシャツのボタンをひとりではずすことが難しく、無理に脱ごうとしたり、服を引っ張ってボタンをとろうとする場面がよく見られる。また、脱げなくても助けを求めてこないときに教員から「ボタンがはずれなかったらどうするの?」と言うことばかけがあると、手を胸の前で合わせてたたく「お願い」の合図をしたり、えりを持って引っ張ってボタンをみせたりすることはあるが、自分から伝えようとする意志表示は十分でなく、他の行動をしたり教員が気づいてくれるまで待っていたりすることが多い。
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般化場面 |
着替えの時、教室内で離れた所にいる教員の所まで行って、おねがいカードを提示し、援助要求することができる。 ・ポロシャツのボタン ・スカート
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指導手続 |
<ベースライン> 着替えスペースに着替えスケジュールを提示し、その中のポロシャツの写真の横におねがいカードをつけておく。朝の着替えの時、本児がポロシャツのボタンをはずすときに教員におねがいカードを渡すことができるかどうかを記録する。3日間とる。 <指導手続き1>初日 ・着替えスペースに入り、カバンを下ろした後、ポロシャツのボタンをはずすのを手伝って欲しいときにおねがいカードを手渡すことをカードを見せながら話をする。 ・ポロシャツを脱ぐときに、他の教員が本児の腕を持っておねがいカードをとり、本児と向かい合っている教員におねがいカードを手渡すよう身体的ガイダンスをしてボタンをはずしてもらう。 <指導手続き2>2日目から 本児がおねがいカードを提示するまで10秒間待ち、でないときは「おねがいカードは?」のことばかけをする。
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教材教具など |
・ことば「おねがい」のついた写真カード ・着替えスケジュール
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達成基準 |
1人でおねがいカードを教員に手渡せることが、3日連続できたら達成とする。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
指導場面 ・正反応・・・1人でおねがいカードを提示できた時(1点)
・誤反応・・・プロンプト(ことばかけ)をした時(0点) プロンプトしても要求が出なかった時(0点)
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指導期間 |
ベースライン 10月18日〜10月20日 指導期間 10月23日〜11月14日
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結果 |
ベースラインでは、カードには全く手が出ず、ポロシャツのえりを持って、教員にはずして欲しいことを伝えた。指導に入り、14日で達成した。
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考察 |
指導開始後、自分でえりを引っ張りボタンがはずれてしまうことが4日あった。また、着替えをする必要のない日も3日あり、なかなか集中した指導ができなかった。えりを引っ張ってもボタンが取れないようにボタン穴を小さくした結果、Hさんではボタンがとれず、教員がことばかけをするとすぐカードを持って手渡せるようになった。12日目からは、「い」と言ってカードを手渡してくることができた。
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ボタンをはずして欲しいときにカードを手渡す行動
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
着替えで、ポロシャツのボタンがはずせないとき |
近くの教員に「おねがいカード」を手渡す |
ボタンをはずしてもらえる(↑) |
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第一系列のタイトル: 近くにいる教員にカードを渡せた点数 |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
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第二系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
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記入日時 2006/11/01/16:50:33
No.298
記入者 SK
E-Mail
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