200629



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小学部中学年の児童が、排尿後の処理が手順表を見て自分でできるための指導
概 要
排泄が自立できていることは、学校生活場面だけでなく校外での活動や家庭生活、また将来の自立生活を考える上でも非常に重要である。この事例では、写真の手順表やご褒美のシールを利用し、排泄後の処理を自発的に促す指導を実施する。

対象児のプロフィール
H児(小学部3年生)ウィリアムス症候群

障害の特性
注意力が散漫で、集中の持続時間が短い。聴覚的な刺激に過敏に反応する。非常に社交的であり、人と会話することが好きである。話に夢中になるあまり、目の前の課題に意識が向かないことが多い。

指導者
クラス担任(一人)

長期目標
トイレに行くとき、トイレの入り口前で教員が「自分でしてね」と声かけすることよって、自分で手順表を見て排尿後の処理をすることができる。

短期目標
トイレに行くとき、トイレの個室に入る前に教員が「自分でしてね」と声かけをすることで、自分で手順表を見て排尿後の処理をすることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
教室のトイレで排尿する時(1日1〜2回)、個室前で教員が「自分でしてね」と声かけすることによって、自分で手順表を見て排尿後の処理をすることができる。

標的行動とこれを選んだ理由
 本児は、排尿後の処理(ペーパーをちぎる、拭く、水を流す)の各行動のスキルは身に付けることができている。しかし、一人でトイレに行くと処理をせずに出てくることが多い。そのため、学校でも家庭でも誰かがトイレまで付いて行き、処理をしているか確認することが必要な状態である。排尿後の処理が自分でできるようになることは将来の自立生活を目指す上で重要である。この指導を通して、日頃教員からの指示を求めることの多い本児が、少しのプロンプトによって自分で活動できるという自信をつけて欲しい。また、保護者からの要望もあった。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
 本児は、前期からの指導(写真+言葉の手順表(1.ペーパーをちぎる、2.拭く、3.水を流す)を利用した指導)や夏休みの家庭での指導を通し、排尿後に教員が「次は何をするの?」という声かけのプロンプトを出すことによって、手順表に沿って自分で処理をすることができるようになった。しかし、排尿が終わると、教員に「できました」と報告したまま、教員のプロンプトを待つ状態であり、自発的に処理には移れていない。
 教室のトイレに行くとき、個室の前で「自分でしてね」と声かけし、排尿の報告後の「次は何するの?」の声かけをせずに次の行動が起こるまで黙って様子を見ることを10日間(そのうちトイレに行った日数7日)続けたが、プロンプトがないことに混乱し、「できました」と何度も言いながら下着を下ろしたまま個室から出てきたり、プロンプトによって処理はできたものの自分で頭を叩く自傷が見られることがあった。

般化場面
(1)学校:教室外のトイレでも、手順表を見ることで、排尿後の処理が自分でできる。
(2)家庭:家のトイレでも、手順表を見ることで、排尿後の処理が自分でできる。

指導場面
本児が教室のトイレで排尿するとき(1日1〜2回)

指導手続
・トイレの扉に「トイレがんばったカード」を貼り、自分で処理ができた時は本児が好きなキャラクターのシールが貼れることを伝える。指導開始より1週間は、トイレに行くごとに個室に入る前にカードを指さしして「自分でできたらシール貼ろうね」と声かけして確認する。カードは1週間分のシールが貼れるようし、週末家庭に持ち帰り保護者にほめてもらえるようにする。
・本児がトイレ(教室)に行きたいという訴えがあったとき、教員は後から付いていく。個室に入る前に「自分でしてね」と声かけする。
・排尿後、自分で手順表を見て処理ができれば、「すごいね、自分でできたね」と賞賛し、シールを貼るよう促す。
・処理をせずに出てこようとした時や、自発的に処理に移れない時は1「何をするの」の声かけ、2手順表への指さし3.声かけ「してください」+手順表への指さし、4身体的ガイダンスの順にプロンプトを出す。処理が終われば、「シールはできません。自分でできたときにね」と声かけしてシールは貼れないことを確認する。

教材教具など
手順表(写真+文字)、「トイレがんばったカード」、シール(本児の好きなキャラクター)

達成基準
排尿後の処理(ペーパーをちぎる、拭く、流す)が、トイレの個室に入る前の声かけ(「自分でしてね」)のみで行うことが3日間連続したら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
指導場面において
プロンプトなく自分でできた場合 5点

《プロンプトが必要だった場合》
声かけ「何をするの」 4点
黙って手順表に指さし 3点
声かけ「してください」+手順表への指さし 2点
身体的ガイダンス 1点

処理をせずトイレから出てきた場合 0点

1日に複数回トイレに行った場合は、一番低い点数をその日の点数とする。

指導期間
2006年10月〜12月

結果
 指導を開始したのは9月からであったが、この頃は本児の水分摂取量が学校でも家庭でも減っていた。また、運動会の練習が連日続き、体力のない本児は精神的にも肉体的にも疲弊しており、些細なことでイライラしてパニックを起こすなど不安定な状態であった。そのため、自発的にトイレに行きたがらず、給食前にトイレに行くことを教員が促すと、必ず排尿はするのだが、「おしっこでませんでした」と処理を拒否し、頭を叩く自傷が見られ始めた。そこで「声かけをせず見守る」という指導を一旦中止し、排尿ができれば「何をするの?」という声かけをして、処理後は必ずご褒美のシールと賞賛をもらえるようにして、自発的にトイレへ行くことができるまで待つようにした。
 10月11日以降、運動会が終わって平常授業に戻ると、徐々に心身ともに安定した。精神的に落ち着くことで処理後にシールがもらえることが理解できてきたため、16日から再び指導を開始した。  

考察

A:先行条件 B:行動 C:結果
教室のトイレに行くとき、個室に入る前に教員の声かけ「自分でしてね」 《正反応》
a)手順表を自分で見ながら、一連の処理(ペーパーをちぎる、拭く、水を流す)ができる。
《誤反応》
b)排尿後「できました」と報告し、歌を歌ったり独り言を言うなどの逸脱行動をする。
c)排尿後「できました」と報告し、処理をせず出てくる。
《無反応→10秒》排尿後「できました」と報告したまま、無反応。
《正反応》
a)言語賞賛「すごいね、自分でできたね」+「トイレがんばったカード」にシールを一つ貼る。
《誤反応》
b)黙って5秒待つ。逸脱行動がおさまらない場合は「何をするの」と声かけする。それでも処理に移れない場合は手順表への指さし、声かけ「してください」+手順表への指さし、身体的ガイダンスの順にプロンプトを出す。
c)「できてないよ」と言い、個室に入るよう促す。もう1度出てこようとする場合や、もう5秒待っても正反応が起こらない場合は、「何をするの」と声かけをする。声かけのみで処理に移れない場合は黙って手順表を指さす。それでもできない時は声かけ「してください」+手順表への指さし、身体的ガイダンスの順にプロンプトを出す。
《無反応→10秒》d)黙って10秒待つ。反応がない場合は「何するの」と声かけする。声かけのみで処理に移れない場合は手順表への指さし、声かけ「してください」+手順表への指さし、身体的ガイダンスの順にプロンプトを出す。


第一系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2006/11/14/15:11:32  No.320
記入者 YO  E-Mail

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