概 要 |
一人で着替えができる児童であるが、着替えた後、制服や体操服の襟が立ったままの状態である。教師が「襟」と声をかけたり襟を指さしても、求められていることの意味がわからず、襟を折り返すことができない。ここでは、着替えの後にスケジュールに「襟折り」の活動を提示して、立った状態の襟を折り返すことができるように指導していく。
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障害の特性 |
近くに人がいると落ち着かず、一人でできることもできなくなることが多い。声かけや指さしによる指示に対しては、同じように言葉を真似したり指さしを真似したりして、求められていることの意味を理解して行動することが難しい。人の顔色を見て行動したり、指示を待つことが多く、一人で自信を持って取り組めるようになるまでに時間がかかることが多い。
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長期目標 |
着替え後に衣服の襟元を整えることができる。
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短期目標 |
着替え後に制服や体操服の襟を折り返すことができる。
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指導目標(標的行動とこれを選んだ理由) |
標的行動:着替え後に、制服の襟を折り返すことができる。 1 スケジュールカードを取る。 2 鏡の前に移動する。 3 鏡に付けたポケットにカードを入れる。 4 制服の襟を持つ。 5 襟を折り返す。 上記の5項目を一連の行動として促すことで、襟を折り返すことに気づき、指示なくできるようになると考えた。
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指導目標に関する対象児の実態(ベースライン) |
襟を折り返すということについては、襟を折り返した状態がわかるようにするため、これまでにマネキンの上半身に着せた状態の制服や体操服の襟を折り返すことに取り組み、既にできるようになっている。しかし、自分が着ている制服の襟が立った状態の時、「襟」と声をかけたり指さしで注意を促すと、「襟」というのはわかり両手で持って引っ張るが、それだけで終わり、折り返すことはできない。
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般化場面 |
登校時、制服から体操服に着替えた時(体操服の襟で) 家庭で制服に着替えた時(違う場所で)
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指導手続 |
スケジュールの短冊にスケジュールカード(襟を折り返している写真)を提示しておく。着替えコーナーのロッカーの対面の壁に鏡を設置しておき、鏡にはスケジュールカードを入れるポケット付けておく。ポケットには、スケジュールカードと同じ「襟を折り返している写真」を貼っておく。 1 スケジュールカードを取る。 2 鏡の前に移動する。 3 鏡に付けたポケットにカードを入れる。 4 制服の襟を持つ。 5 襟を折り返す。 上記の1〜5について、5秒間は無反応で待ち、それでも正反応が見られない場合は、指さし(声かけ)で促す。5秒間待っても正反応が見られない場合は、ジェスチャーで促す。5秒間待っても正反応が見られない場合は、本児の後方から手を添えて行動を促す。
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教材教具など |
スケジュールカード(襟を折り返している写真)、鏡、カードポケット(襟を折り返している写真を付けておく)
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達成基準 |
1 スケジュールカードを取る。 2 鏡の前に移動する。 3 鏡に付けたポケットにカードを入れる。 4 制服の襟を持つ。 5 襟を折り返す。 上記の5項目すべてにおいて正反応が見られ、すべてプロンプトなく3日間連続してできた場合を達成とする。
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記録の取り方(般化場面と指導場面) |
1 スケジュールカードを取る。 2 鏡の前に移動する。 3 鏡に付けたポケットにカードを入れる。 4 制服の襟を持つ。 5 襟を折り返す。 上記の各項目について、以下のように点数化する。 指示なくできた:3点 声かけや指さしでできた:2点 ジェスチャーでできた:1点 身体的ガイダンスでできた:0点
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結果 |
スケジュールカードを取ることは1日目からできた。鏡の前に移動することは、1日目は誘導し、2日目は指さし、3日目以降は指示なくできた。カードをポケットに入れることは、1日目は指さし、2日目以降は指示なくできた。制服の襟を持つことは、1日目、2日目は手を添えて促し、3日目、4日目は「襟」と声をかけながら指さし、5日目以降は指示なくできた。襟を折り返すことは、1日目は手を添えて促し、2日目、3日目はジェスチャーで促した。4日目は声かけと指さしで襟を持った後一人で襟を折り返すことができた. 5日目、6日目ときれいに折り返せていない部分があり、指さして修正した。7日目以降は指示なくきれいに折り返すことができた。
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考察 |
事前に、マネキンの上半身に着せた状態の制服で、スケジュールカード(襟を折り返している写真)を教師に手渡してから「襟を持って襟を折り返す」ということを習得していたため、スケジュールカードをカードポケットに入れて襟を持つことができた後は、襟の折り返しを続けて指示なくすることができた。スケジュールカードを鏡に付けたカードポケットに入れることで襟を持って折り返すことにつなげることができたので、とても早い目標達成となった。本人が鏡に映った自分の姿を視覚的にどう捉えているかはわからないが、この一連の行動を続けることで、鏡に映った自分の姿を少しでも見ることができ、自分のしている行動に気づくことを期待している。
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Before
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
立った状態の制服の襟 + 教師に「襟」と言われる |
襟を持って引っ張る |
襟が立ったまま(↓) 教師にまた「襟」と言われる(↓) どうしたらよいのかがわからない(↓) |
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After
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A:先行条件 |
B:行動 |
C:結果 |
立った状態の制服の襟 + スケジュールカード(襟を折り返している写真)あり |
スケジュールカードを鏡に付いたカードポケットに入れ、立った制服の襟を持って折り返す |
襟元が整う(↑) 教師に両手をパチンと合わせて誉めてもらえる(↑) |
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第一系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
Intervention2: 指導手続き2
Intervention3: 指導手続き3
Intervention4: 指導手続き4
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第二系列のタイトル: |
Baseline: ベースライン
Intervention1: 指導手続き1
Intervention2: 指導手続き2
Intervention3: 指導手続き3
Intervention4: 指導手続き4
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記入日時 2006/10/16/14:18:24
No.292
記入者 M
E-Mail
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