2005-09



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小学部中学年の知的障害児に一人で過ごせる遊びを教える。
概 要
本児は、人との関わりを楽しむことができ,関わり要求も多く見られる。コミュニケーションの手段としては,シンボルカードなどで要求することもできるが,圧倒的に発声や指さしなどで要求することが多い。写真カードは理解しており,それを使って遊びを要求することもできる。しかし,遊びが長続きしなかったり,友だちの遊びをまねしてしまうことが多い。家庭においても,関わり要求が多く見られ,一人で遊ぶことは少ない。これからの社会生活を考えると,一人で過ごさなければならない場面もあると予想される。そのような時に一人で安定して過ごせる方法が必要であると考え今回の取り組みを行うことにした。

対象児のプロフィール
Iさん

諸検査結果
新版K式発達検査(2003年2月4日)
  姿勢・運動 2:11
  認知・適応 1:9
  言語・社会 1:7
  全領域   1:10

S-M社会生活能力検査(2005年9月5日)
  2歳6ヶ月

障害の特性
発声はあるが、発語はほとんどない。

指導者
担任2人

長期目標
選択ボードからしたい遊びのカードを選択して一人で遊ぶ。

短期目標
教員が提示した2種類のカードから、遊びを選択して5分間一人で遊ぶ。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
教員が提示したぬり絵で3分間一人で遊ぶ。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
本児からの関わり要求は多いが、遊びが長続きしなかったり、一人で遊ぶ方法がわからずに友だちの遊びをまねしてしまうことが多い。なぞり書きは、できるようになったばかりであるため、溝板を使用して絵や形や文字が書けるようにする。ぬり絵も同様に溝板を使用して、ぬる場所を示す。教員の賞賛が、好子となって活動の意欲につながる。

般化場面
家庭において遊びを選択して一人で遊ぶ。

指導場面
昼休み

指導手続
【ベースライン】
教員が5種類のぬり絵を本児の前に提示する。ペンを1本渡して塗るように促す。本児が教員に向かってぬり絵を差し出したり,立ったりした場合は終了とする。
【指導方法1(ペン1本)】
本児が出来上がりをイメージしやすくするために,完成の絵を見せた後,溝板(必要な部分だけが塗れるようになったジグ)をかぶせて机上に並べ,ペンを渡して色をぬるよう促す。ぬり絵の途中でキョロキョロしだすなど,ぬり絵への集中がとぎれてきた場合は,「じょうずにできようなぁ。」「もっとぬってみよか。」などのプロンプトを行う。イスから立ち上がる,教員に向かって絵を差し出すなどの意思表示をした場合は終了とする。終了後は,できあがったものを見ながら賞賛する。

教材教具など
5種類のぬり絵の溝板 、ペン1本、クレパス20色

達成基準
5日連続、一人でぬり絵をして3分以上過ごすことができれば達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
「遊びをどのくらい一人できたか」「遊び継続中にどれだけプロンプトを出したか」を記録する。

指導期間
10月12日〜21日

結果
ベースライン時は,20秒や30秒で終了していたが,賞賛のプロンプトを行うことにより遊びの持続時間が延びた。さらに,ペンからクレパスに変更したことにより,飛躍的に時間が延びた。プロンプトは行っているが、5日連続一人でぬり絵を3分以上行うことができたので達成とした。

考察
ぬるものをペンからクレパスに変更したことにより飛躍的に時間が延びたことは,クレパスが遊び道具の一つとして加わったことが要因になっていると考えられる。クレパスが遊び道具として機能しなくなれば,また時間が短縮される可能性が考えられる。今後遊びの時間を維持していくためには,ぬり絵の枚数や種類を増やす,ぬる道具を変更していくなど,環境設定の仕方やぬり絵のスキルアップ及び遊びの種類を増やしていくなどを考えていかなければならないと考えられた。

ペン1本でのぬり絵
A:先行条件 B:行動 C:結果
ぬり絵を提示されたとき ぬり絵を塗る 色がつく(↑)
先生や友だちがほめてくれる(↑)

クレパス20色でのぬり絵
A:先行条件 B:行動 C:結果
ぬり絵を提示されたとき
     +
  クレパス20色
ぬり絵を塗る
  +
クレパスの色を選択する
いろいろな色がつく(↑)
先生や友だちがほめてくれる(↑)
    +
好きな色を選ぶことができる(↑)


第一系列のタイトル: 遊びの持続時間
Baseline: ベースライン   Intervention1: 学校で3分間のぬり絵(ペン1本)   Intervention2: 学校で3分間のぬり絵(クレパス20色)  
第二系列のタイトル: 遊び持続中のプロンプト数
Baseline: ベースライン   Intervention1: 学校で3分間のぬり絵(ペン1本)   Intervention2: 学校で3分間のぬり絵(クレパス20色)  
記入日時 2005/09/07/06:42:29  No.9
記入者 O.F  E-Mail

小学部中学年の知的障害児に一人で過ごせる遊びを教える。
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
自分の好きなぬり絵を選択して5分間ぬり絵をする。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
ぬりたい絵を選択することはできる。はみ出さないようにぬったり、いろいろな色を使ってぬることは難しいが、なぐり書きの要領で楽しみながらぬることはできる。できたものを友だちや教員に見せてほめてもらうことがうれしくて、いつもたくさんの人に見せにいっている。しかし、見せることが活動の目的となりつつあり、ぬり絵への関心が薄れつつある。

指導場面
昼休み

指導手続
【指導方法1】
2穴リングファイルに裏表印刷したぬり絵(8種類)を用意しておく。
\x{2460}本児がいすに座ったら,ぬり絵のファイルとクレパスを机の上に提示する。
\x{2461}「いろいろな色を使って,たくさん塗ってね」
「そのほうがみんなもっとほめてくれるかもしれないね」
「じゃあはじめてね」
と開始の合図を行い,教員は本児から3m離れタイマーを押す。
\x{2462}周りの状況等により集中が切れてきた場合(キョロキョロし始めるなど)は,本児に近づいて「もっとぬってみよか」「いろいろな色で塗ってみる」などのプロンプトを行う。
\x{2463}本児が立ち上がる,教員に向かってファイルを差し出すなど,終わりの意思表示をしたら終了としタイマーを止める。
\x{2464}出来上がったぬり絵を見てほめたり,友だちや教員などに一緒に見せに行ったりする。
【指導方法2】
ぬり絵の絵を変更して指導する。手続きは指導方法1と同様で行う。

教材教具など
ぬり絵、クレパス20色、2穴リングファイル、タイマー

達成基準
5日間連続して一人でぬり絵をして5分以上過ごすことができれば達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
「遊びをどのくらい一人できたか」
「遊び継続中にどれだけプロンプトを出したか」
 を記録する。

結果
絵柄を変えたり,ぬる道具を変更することによって遊び持続時間は平均的に4分台をキープすることはできた。遊びの持続時間が5分を超える日はあるものの5日間連続して一人でぬり絵を5分以上行うことは難しかった。

考察
ぬり絵中の本児の状況を分析すると,教室の外で友だちや教員の声がすると中断したり,ぬることをやめてしまったりする場面が多いことがわかった。このことから,友だちや教員と遊ぶことの方がぬり絵をすることよりも楽しく,ぬり絵の種類やぬる道具を変更しても強化されていかないことがわかった。このことから,これ以上継続しても目標は達成することが難しく,本児にとってぬり絵が楽しい遊びとして定着しないのではないかと考えられた。そこで,一つの遊びにこだわるのではなく様々な遊びを提供し経験する中で,本児自身が楽しんで遊べる遊びの種類を増やし,一人で遊ぶことが強化されていくように目標を変更し取り組むことにした。

2穴ファイルに閉じたぬり絵での指導
A:先行条件 B:行動 C:結果
2穴ファイルに閉じたぬり絵を提示されたとき
     +
   クレパス20色
ファイルのぬり絵からぬりたい絵を選択する
         +
   クレパスの色を選ぶ
         +
      ぬり絵をする
自分のぬりたい絵を選択できる(↑)
好きな色を選ぶことができる(↑)
いろいろな色がつく(↑)
先生や友だちがほめてくれる(↑)


第一系列のタイトル: 遊びの持続時間
Intervention1: 学校で5分間のぬり絵(絵1)   Intervention2: 学校で5分間のぬり絵(絵2)   Intervention3: 学校で5分間のぬり絵(絵2+クレヨン12色)   Intervention4: 学校で5分間のぬり絵(絵2+ペン12色)   Intervention5: 学校で5分間のぬり絵(絵2+クレパス20色+クレヨン12色+ペン12色)  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/11/04/18:07:10  No.65
記入者 O.F  E-Mail

小学部中学年の知的障害児に一人で過ごせる遊びを教える。

第一系列のタイトル: 遊び持続中のプロンプト数
Intervention1: 学校で5分間のぬり絵(絵1)   Intervention2: 学校で5分間のぬり絵(絵2)   Intervention3: 学校で5分間のぬり絵(絵2+クレヨン12色)   Intervention4 : 学校で5分間のぬり絵(絵2+ペン12色)  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/12/07/18:11:26  No.76
記入者 O.F  E-Mail

小学部中学年の知的障害児に一人で過ごせる遊びを教える
指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
遊びを選択して3分間一人で遊ぶ。

指導場面
すべての休み時間

指導手続
【指導方法1】 
教室の遊びコーナーにビデオ,TVゲーム,パソコンゲーム,絵本,ぬり絵,粘土を用意する。各遊びの内容は以下の通り。ビデオ「おかあさんといっしょ,アンパンマンの手遊び歌」TVゲーム「ぷよぷよ」,パソコンゲーム「電車でGO」,絵本「一年生や音の鳴る絵本等」,ぬり絵「絵柄8種類でクレヨン等で塗る」,粘土「かるかるねんど」を使用し,型抜きや絵の具を用意する。
\x{2460}本児からしたいという要求があった時,または自分から遊び始めた時にタイマーを押す。自分で用意ができない物は教員が用意をする。
\x{2461}本児が立ち上がったり,教員に向かってファイルを差し出す等,終わりの意思表示をしたら終了としタイマーを止める。

教材教具など
TVゲーム、パソコン、ビデオ、絵本、ぬり絵ファイル、クレヨン、粘土、型ぬき、絵の具、タイマー

達成基準
一つの遊びで,5回連続して一人で3分以上遊ぶことができたら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
「どの遊びを選択し,どのくらい継続してできたか」を記録する。

結果
6種類の遊びのうち「粘土」「TVゲーム」での遊びが5回連続して一人で3分以上遊ぶことができた。また,絵本,パソコンゲーム,ビデオについても回数が少なくまだ達成基準には達していないが,一人で3分以上持続して遊ぶことができている。取り組みを継続することで目標を達成する遊びが増えていくと思われる。

考察
はじめは遊びを知らせるために教員から誘って遊んでいたが,2回目以降は自分からやりたいと要求して遊ぶことができた。また、プロンプトを行わなくても一人で10分以上遊ぶことができたことから、楽しいから一人でも遊ぶということが本児のなかに芽生え始めてきたのではないかと考えられる。

自分で遊びを選択して遊ぶ
A:先行条件 B:行動 C:結果
遊び相手がいなくなった
    +
教室に一人で遊べる物がある
遊びを選択して遊ぶ 画面の変化がありおもしろい(↑)
好きなダンスが踊れる(↑)
ほめてもらえてうれしい(↑)


第一系列のタイトル: ねんどでの遊び持続時間
Intervention: ねんどでの遊び  
第二系列のタイトル: TVゲームでの遊び持続時間
Intervention: TVゲームでの遊び  
記入日時 2006/02/27/17:25:32  No.255
記入者 O.F  E-Mail

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