2005-18



[TOP]  [新規データ登録]  [検索]  [修正・削除・データ処理


小学部中学年の自閉症児に対するプリントを届けるおつかいの指導
概 要
お手伝い活動は、自宅においても、仕事場や施設においても望ましい活動である。また、おつかい活動の場面においては、人との関わりが重要となってくるため、コミュニケーション能力も培うことができる。この事例では、指定された場所に行き、指定された教員にプリントを手渡す指導を行う。

対象児のプロフィール
K児
小3女児 自閉症

諸検査結果
PEP-R 1歳8ヶ月(H15.3)

障害の特性
さまざまな点においてこだわりが強い。
一度指導しただけで暗記していることもあり、指導した内容やスキルの習得は非常に早く、確実性がある。
少しずつ発声できる言葉が増えてきている。
文字に対して強い興味があり、単語を覚えることも早い。

指導者
YC

長期目標
人に物を届けるおつかいや出席調べができる。

短期目標
数人の教員にプリントを届けるおつかいができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
手順書を見て、指定の場所に行き、指定の教員にプリントを届けるおつかいができる。また、サインをもらい、教室に帰ってくると担任に報告することができる。
【Step1】指定する場所を1つ、指定する教員を1人にする条件
【Step2】指定する場所を2つ、指定する教員を2人にする条件
【Step3】指定する場所に指定する教員がいない条件

標的行動とこれを選んだ理由
昨年度からプリントを教材室のボックスに取りに行くという「プリント取り」のお手伝い活動を行っており、指導が定着すれば指定の場所に物を取りに行くことは可能となった。今年度は、さらにステップを上げるため、複数の場所、教員を目的に、プリントを届けるお手伝い活動を行うこととする。また、プリントを届け、サインしてもらうという過程において、他者とのコミュニケーションを築いていくことができると考える。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
目的の場所と教員については、担任がついて一度指導することで、ほぼ記憶することができる。すでに理解している場所や教員も多い。しかし、一連の活動内容を確実に行うことは、現段階では困難である。また、報告なしに活動を終わらせたりするというような場合もある。

般化場面
1)学校:出席調べ
2)家庭:家庭でのおつかい

指導場面
お手伝い活動場面(月曜日〜金曜日)

指導手続
お手伝い活動の時間帯に「プリント届け」のスケジュールを入れておく。

【Step1】指定する場所を1つ、指定する教員を1人にする条件
プリントを入れるケースに場所と教員のカード、手順書を貼っておき、サインをしてもらうためのプリントと鉛筆もセットしておく。また、「わたしました」カードを貼っておく。お手伝い活動に入る前に、必ず目的の教員がいるかどうかということを確認・依頼しておく。
【Step2】指定する場所を2つ、指定する教員を2人にする条件
ケースは【Step1】と同様のものを使用する。毎日同じ場所、教員のカードをセットするのではなく、異なる場所や教員を設定しておく。
【Step3】指定する場所に指定する教員がいない条件
ケースに「いませんでした」という報告のカードを貼っておく。また、お手伝い活動に入る前に、目的の教員がいないことを確認・依頼する。【Step3】の指導開始後、当分は目的教員がいない条件ばかりで指導を行う。活動に慣れてくると、目的教員がいる条件、いない条件とランダムに指導を行う。

教材教具など
ケース、手順書、写真カード(場所、人物)、「わたしました」カード、「いませんでした」カード、プリント、サイン用プリント、ボールペン

達成基準
【Step1】【Step2】:全ての項目(\x{2460}〜\x{2467})を3回続けてプロンプトなしで一人でできると達成とする。(24点満点)
【Step3】:全ての項目(\x{2460}〜\x{2464})を3回続けてプロンプトなしで一人でできると達成とする。(15点満点)

記録の取り方(般化場面と指導場面)
◎(3点):プロンプトなし
○(2点):声かけ
△(1点):指さし
×(0点):身体的プロンプト

*各行動(指導場面)
【Step1】【Step2】
\x{2460}目的の場所に行く。
\x{2461}戸をノックする。
\x{2462}目的の教員の目の前に行く。
\x{2463}プリントを目的の教員に渡す。
\x{2464}サイン用のプリント用紙を手渡す。
(プリントケースを裏返す。)
\x{2465}サインをしてもらう間、その場で待つ。
\x{2466}サインをしてもらったら教室に帰る。
\x{2467}担任に「わたしました」カードを手渡す。

【Step3】
\x{2460}目的の場所に行く。
\x{2461}戸をノックする。
\x{2462}目的の教員がいないことを確認する。
\x{2463}教室に戻ってくる。
\x{2464}担任に「いませんでした」カードを手渡す。

指導期間
2005年9月〜12月

結果
 指導開始日は、全項目において声かけや指さし,身体的なプロンプトが必要であった。2回目になると、目的の場所には行くことができ、指さしでできることが多くなった。その後も指導を継続することにより、徐々に得点を伸ばしていくことができた。しかし、指導1における目的の場所は、Kさんにとって中に入るのは初めての場所であり、その場所に行くことはできるが、中に入るとさまざまなものが気になってしまい、活動に集中できないことが多かった。そこで、お昼休みの時間帯にその場所へ遊びに行くことを何度か行った。すると、少しずつその場所の環境に慣れていくことができ、プリント届けのお手伝い活動の場面でも、スムーズに活動を行うことができるようになった。
 指導2では、指導1の場所と教員に加え、さらにもう一つの場所、もう一人の教員を設定した。指導開始日は、これまでと異なる場所と教員を提示していたので少し戸惑う様子も見られた。しかし、2日目になるとほぼ満点に近い点数を獲得することができた。手順書を見て一つずつ確認し、確実に全ての活動内容をこなすことができるようになっていった。
 指導3は、現在検討中である。

考察
 指導1では、学校内の行事などで毎日継続して行うことができなかったことや、慣れない環境の中で活動するということもあり、達成するまでには時間を要したが、一連の流れを行うスキルは習得することができた。Kさんは新しい場所においては強い興味を示すということがわかり、このようなおつかい活動をする際には、それに対する配慮が必要であると感じた。○事前に慣れた環境にしておく、○新しい場所は初めは一人で行かず、担任が付きそう、○ご褒美となる好子を用意しておく、などの配慮事項が挙げられる。
 指導2は指導1と比較し、目的の場所や教員がランダムに変更するので活動内容を忘れることもあったが、非常に早いペースで指導2を達成することができた。活動内容を忘れるという点に関して、Kさんの集中力の欠如も理由にあがるが、特に、手順書に問題があると考えられる。最初は活動の一つひとつに集中できるようにと、一枚ずつめくる形式のものにしていたが、およその活動内容を理解してくると、一つの活動を通り越してその次の活動に入ろうとすることがあった。その様子を見て、手順書の見直しが必要であると感じた。例えば、「\x{2460}△△にいく。」と「\x{2461}ノックする。」の写真を一枚にまとめ、手順書を簡潔にすることや、手順書を全提示にするということが考えられる。
 指導3は、指導1と指導2の結果・考察により、一部手順書の見直しを行ったうえで開始したいと考えており、現在、以下のような手順に変更するため、手順書を再考している。

【Step1】【Step2】で使用した手順書       
\x{2460}△△にいく。         
\x{2461}ノックする。         
\x{2462}□□せんせい         
\x{2463}プリントをわたす。 
\x{2464}サインをもらう。       
\x{2465}きょうしつにかえる。     
\x{2466}「わたしました」      ※写真カード付き

↓変更

【Step3】
*目的の教員がいる時*
\x{2460}△△にいってノックする。
\x{2461}□□せんせいがいる。「○→\x{2462}」
\x{2462}プリントをわたす。
\x{2463}サインをもらう。
\x{2464}きょうしつにかえる。
\x{2465}「わたしました」
*目的の教員がいない時*
\x{2460}△△にいってノックする。
\x{2461}□□せんせいがいない。「×→\x{2464}」
\x{2462}プリントをわたす。
\x{2463}サインをもらう。
\x{2464}きょうしつにかえる。
\x{2465}「いませんでした」

【Step1】【Step2】
A:先行条件 B:行動 C:結果
「プリント届け」のスケジュールカードを見た時 《正反応》
a)指定された場所に行き、指定された教員にプリントを届け、サインをもらった後、教室に戻って担任に報告することができる。
《誤反応》
b)戸をノックせず、勝手に部屋に入っていこうとする。
c)サインしてもらうプリントを渡すのを忘れる。
d)教室に戻ってきた後、担任に報告せず、次の活動に移ろうとする。
《無反応→10秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「おかえり。よくできました。」とほめる。
《誤反応》
b)部屋に入るまでは無反応で待つ。部屋に入ってしまった場合は、外に出るように促し、「ノックする。」と声かけする。それでも正反応が見られない場合は手順書カードを指さす。
c)教室に戻ろうと振り返るまでは無反応で待つ。教室に向かって歩き始めた場合は「(手順書の)\x{2464}番見て。」と声かけをする。それでも正反応が見られない場合は手順書カードを指さす。
d)次の活動に移るためにトランジッションコーナーに行くまでは無反応で待つ。次の活動のカードを取ろうとした場合は、「わたしましたカードは?」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は、カードを手渡すよう担任が手を出し、カードを指さす。
《無反応→10秒間》
e)「次は?」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は、手順書を見るように声かけする。

【Step3】
A:先行条件 B:行動 C:結果
プリント届けのお手伝い活動で、プリントを届ける相手がいなかった時 《正反応》
a)教室に戻り、担任に「いませんでした」カードを手渡し、報告することができる。
《誤反応》
b)違う教員にプリントを手渡そうとする。
c)担任に「いませんでした」カードを手渡さず、次の活動に移ろうとする。
d)担任に「いませんでした」カードではなく、「わたしました」カードを手渡す。
《無反応→10秒間》
e)無反応
《正反応》
a)「はい、わかりました。ご苦労さま。」と言ってほめる。
《誤反応》
b)「いないので、教室に戻ります。」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は教室の絵カードを提示する。(この場合、評価は△とする。)
c)次の活動に移るためにトランジッションコーナーに行くまでは、無反応で待つ。次の活動のカードを取ろうとした場合は、「いませんでしたカードは?」と声かけし、それでも正反応が見られない場合はカードを手渡すよう担任が手を出し、カードを指さす。
d)「違うよ。いませんでした。」と声かけし、それでも正反応が見られない場合は「いませんでした」カードを指さす。
《無反応→10秒間》
e)「どうするの」と声かけし、それでも正反応が見られない場合はカードを指さす。


第一系列のタイトル: 指導1
Intervention1: 指導手続き1  
第二系列のタイトル: 指導2
Intervention2: 指導手続き2  
記入日時 2005/09/24/17:48:44  No.27
記入者 YM  E-Mail

現行ログ/ [1]
++コラボネット++

++マニュアル++
TOP
shiromuku(h)DATA version 4.00