2005-21



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小学部中学年の自閉症児に対するトイレカードを教師に手渡す指導
概 要
トイレに行きたいときに、近くにいる人に伝えて行くということは、とても重要なスキルである。この事例では、携帯しているトイレの絵カードを使用し、教師にトイレに行くということを伝えるという指導を実施する。

対象児のプロフィール
T児
小3男児 自閉症

諸検査結果
PEP-R:1歳3ヶ月
S-M社会生活能力検査:1歳4ヶ月

障害の特性
行動が定着するまで時間がかかるが、定着すると確実に行動できる。思わぬことが、違う場面で般化する。ルーティンで行動しやすい。

指導者
H

長期目標
トイレカードを使用し、自主的にトイレに行くことができる。

短期目標
トイレに行く時に、トイレの絵カードを教師に手渡すことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
トイレに行く時(朝、帰りはスケジュールで提示、給食時は提示なし)に、トイレの絵カードを教師に手渡すことができる。
1)教師が、トランジッションエリアに立つ条件。
2)教師が、トイレの入り口から2メートルほど離れた位置に立つ条件。
3)教師が、トイレから離れた教室内のいろいろな位置に立つ条件。

標的行動とこれを選んだ理由
これまでは、定時排尿であった。トイレに行くことを近くにいる人に伝えて行くことができるようになれば、という保護者の要望があった。また、学校生活だけではなく、家庭生活や他の場面においても、重要なスキルであると考えるため。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
これまでは、定時排尿であった。今年度に入り、保護者の要望もあり、トイレカードを教師に手渡してトイレに行く指導を始めた。プレイエリアのボードやスケジュールのボードにトイレの絵カードを貼っていたものを使用していた。6月末頃からトイレの絵カードを携帯用のものに変更し、指導を行っている。7月頃には、本児がトイレに行こうとしている時、カードを指さすと自分で取って手渡すことができるようになってきていた。

般化場面
1)学校:教室外での活動時 (ホール、体育館、食堂、中庭、運動場など)
2)学校:担任以外の教師に手渡す
3)家庭:家庭で過ごしているとき

指導場面
1:朝の着替え後 
2:給食時
3:帰りの着替え前

指導手続
本児のズボン(体操服・制服)に、トイレの絵カードをマジックテープでつけたホルダーをつけておき、常にカードを携帯しておくようにする。
朝の着替え後と帰りの着替え前は、スケジュールでトイレに行くことを提示する。スケジュールのトイレカードを取るとそれを手渡したり、トイレの入り口にあるカード入れのポケットに入れたりするため、取れないようにしておく。スケジュールを見て、携帯用のトイレの絵カードを取り、教師に手渡す。
給食時はスケジュールで提示しない。トイレに行きたいときに、携帯しているトイレの絵カードを自分で取って教師に手渡し、トイレに行くようにする。

1)教師が、トランジッションエリアに立つ条件。
 本児がトイレに行こうとしている時に、教師がトランジッションエリアで立っておく。
*ABC分析 1参照

2)教師が、トイレの入り口から2メートルほど離れた位置に立つ条件。
 本児がトイレに行こうとしている時に、教師がトイレの入り口から2メートルほど離れた位置に立っておく。
 *ABC分析 2参照

3)教師が、トイレから離れた教室内のいろいろな位置に立つ条件。
本児がトイレに行こうとしている時に、教室内のいろいろな位置(課題コーナー辺り、プレイエリア辺りなど)に立っておく。
 *ABC分析 3参照

教材教具など
トイレの絵カードを貼った携帯用のホルダー、トイレカードを貼ったスケジュールカード

達成基準
各時間(朝の着替え後、給食時、帰りの着替え前)とも正反応が見られ、それが3日間連続したら達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
各時間、各行動においてプロンプトなくできた…1点
                  プロンプトあり(声かけ、指さし、身体的ガイダンス)…0点
 
*各行動(般化場面、指導場面共通)
1,トイレの絵カードを取る。
2,教師に手渡す。
3,トイレに行く。

*1つの時間において、全てプロンプトなくできた場合は、3点満点とする。

指導期間
2005年9月26日〜11月30日

結果
 9月26日からの2ヶ月間、この方法での指導と記録を行った。トイレに行くことをスケジュールで提示する指導と提示しない指導とを同時に行った。
 指導を進めていくと、朝と帰りのスケジュールのカードを見ると、スケジュールのカードが取れないこともあり、すぐ、迷わず携帯用のトイレカードを自分で取ることができるようになった。また、給食時も、トイレに行きたくてズボンを下ろそうとしている時に、継続して指導を行うことによって、徐々にカードを取ることができるようになった。
 しかし、携帯用のトイレカードを教師に手渡すということがなかなか定着せず、トイレカードを取るとカードを持ったままトイレに行こうとしたり、その場にトイレカードを落としてトイレに行こうとしたりすることが多かった。


考察
 本児は、カードを他の人に手渡して伝達するという経験が少ない。現在、教師にカードを手渡しておもちゃを要求する、昼休みに遊びに行きたい場所を伝達するという指導も行っている。どちらも本児にとっては、好きなこと、楽しみにしていることであったため、すぐカードを手渡して伝えるということを理解することができたようだった。しかし、2ヵ月でトイレカードを手渡してトイレに行くということを理解することは難しかったようである。
 今後も継続して指導を行っていく。
 

参考にした先行研究や事例など
2003年 国府養護学校小学部 事例研究
「おしっこに行きたいことを伝える」

1)教師が、トランジッションエリアに立つ条件。
A:先行条件 B:行動 C:結果
トイレに行くとき 《正反応》
a)携帯用のトイレの絵カードを取って、トランジッションエリア立っている教師に手渡すことができる。
《誤反応》
b)トイレの絵カードを取らずに、トイレに行こうとする。
c)トイレの絵カードは取るが、教師に手渡さずにトイレに行こうとする。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)トイレに行くことができるように、通路を開ける。

《誤反応》
b)トイレの入り口をブロックし、トイレカードを指さす。
c)「カード」と声かけをし、カードを手渡すように手を出す。

《無反応→5秒間》
e)「カード」と声かけをし、トイレカードを指さす。

2)教師がトイレの入り口から2メートルほど離れた位置に立つ条件。
A:先行条件 B:行動 C:結果
トイレに行くとき 《正反応》
a)携帯用のトイレの絵カードを取って、トイレの入り口から2メートルほど離れた、教師に手渡すことができる。
《誤反応》
b)トイレの絵カードを取らずに、トイレに行こうとする。
c)トイレの絵カードは取るが、教師に手渡さずにトイレに行こうとする。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)トイレに行くことができるように、通路を開ける。

《誤反応》
b)トイレの入り口をブロックし、トイレカードを指さす。
c)「カード」と声かけをし、カードを手渡すように手を出す。

《無反応→5秒間》
e)「カード」と声かけをし、トイレカードを指さす。

3)教師がトイレから離れた位置に立つ条件。
A:先行条件 B:行動 C:結果
トイレに行くとき 《正反応》
a)携帯用のトイレの絵カードを取って、トイレから離れた位置に立っている教師に手渡すことができる。
《誤反応》
b)トイレの絵カードを取らずに、トイレに行こうとする。
c)トイレの絵カードは取るが、教師に手渡さずにトイレに行こうとする。

《無反応→5秒間》
e)無反応
《正反応》
a)トイレに行くことができるように、通路を開ける。

《誤反応》
b)トイレの入り口をブロックし、トイレカードを指さす。
c)「カード」と声かけをし、カードを手渡すように手を出す。

《無反応→5秒間》
e)「カード」と声かけをし、トイレカードを指さす。


第一系列のタイトル: トイレカードを教師に手渡した得点(朝)\x{2460}
Intervention1: 指導手続き(1:朝)  
第二系列のタイトル: トイレカードを教師に手渡した得点(帰り)\x{2460}
Intervention1: 指導手続き(1:帰り)  
記入日時 2005/09/22/17:06:21  No.26
記入者 H  E-Mail

小学部中学年の自閉症児に対するトイレカードを教師に手渡す指導

第一系列のタイトル: トイレカードを教師に手渡した得点(給食)\x{2460}
Intervention1: 指導手続き(1:給食)  
第二系列のタイトル: 
Baseline: ベースライン   Intervention1: 指導手続き1   Intervention2: 指導手続き2   Intervention3: 指導手続き3   Intervention4: 指導手続き4  
記入日時 2005/10/07/16:32:21  No.52
記入者 H  E-Mail

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