2005-25



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体操服の前後を正しく着る指導
概 要
日常生活において,身辺の処理は重要な課題である。その中の1つとして,着替えを取り上げる。マーキングを手がかりに,体操服の前後を判断し,正しく着替えることに取り組む。

対象児のプロフィール
H児
小4男児 自閉症

諸検査結果
新版K式 (平成14年12月6日)
(P−M/2 : 11 )(C−A/ 1 : 7 )(L−S/0 : 11 )
(全領域/ 1:7)

指導者
TY

長期目標
体操服の前後を確認して正しく着ることができる。

短期目標
体操服(上着)のマーキング部分(後すそ2カ所)に,ボタンを貼る活動を手がかりに,前後を正しく着ることができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
体操服(上着)のマーキング部分(後すそ2カ所)に,ボタンを貼る活動を手がかりに,前後を正しく着ることができる。
【step1】
ボタンをマジックテープ部分に合わせて貼り,その部分を持って着る条件
【step2】
かばんから体操服を取り出し,マジックテープ部分を探して貼る条件

昨年度より体操服(上着)にはマーキングを付けているが,その部分に注目することが難しい。しかし,制服ズボンの前後は間違うことなく履ける。Hくんは,前後の判断をファスナー部分を目印にしているように思われる。そこで,体操服(上着)の目印もHくんが意識できるマーキングであれば,前後を正しく着替えることができるのではないかと考えた。また体操服にはボタン等がないので,前後がわかれば,一人で着替えることができると考える。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
本児は着替え場面において,他者に依存して手伝ってもらおうとする様子が見られる。しかし,衣服の着脱に関しては,ボタンやホックなど一部支援を必要とするが,袖を通す等の着替えの動作は自分で行うことができる。衣服の前後に関しては,制服のズボンは前後を間違うことなく履くことができるが,その他の物に関しては,難しい。また,体操服(上着)には,後すそ部分に水色のマーキングを付けているが,それを意識して着ることはほとんど見られない。

般化場面
1)体操服のズボンを履く時に,同様の方法で履くことができる。
2)体操服(上着)以外の衣服を着る時に,同様の方法で着ることができる。

指導場面
登校後の着替え場面

指導手続
体操服(上着)後すそ部分の2カ所にマジックテープを付ける。着替えコーナーには,体操服のマジックテープ部分に貼るボタン(2個)を体操服を広げる位置のそばに用意する。

【step1】ボタンをマジックテープ部分に合わせて貼り,その部分を持って着る条件
教師は本児と一緒に着替えコーナーに入り,本児がかばんから取り出した体操服をマーキングがある面を表にして,机上に広げる。
【step2】カバンから体操服を取り出し,マジックテープ部分を探してボタンを貼る条件
教師は着替えコーナーの入り口あたりから様子を見て,必要があれば声かけなどの支援を行う。


教材教具など
マーキング(マジックテープ)をつけた体操服・マーキング(ボタン)2個

達成基準
【step1】8点満点が3日間連続した場合,達成とする。
【step2】12点満点が3日間連続した場合,達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
一人でできる 2点,声かけ又は指さしでできる 1点,身体的プロンプトでできる 0点とする。

課題分析
【step1】
\x{2460}着替えコーナーのボタンを取る
\x{2461}マジックテープ部分にボタンを貼る
\x{2462}マーキング部分を持つ
\x{2463}体操服を着る
\x{2460}〜\x{2463}を一人でできた場合,8点満点とする
【step2】
\x{2460}カバンから体操服を取り出す
\x{2461}着替えコーナーのボタンを取る
\x{2462}体操服のマジックテープ部分を探し,見つける
\x{2463}マジックテープ部分にボタンを貼る
\x{2464}マーキング部分を持つ
\x{2465}体操服を着る
\x{2460}〜\x{2465}を一人でできた場合,12点満点とする


指導期間
平成17年10月12日〜平成18年1月

結果
 【step1】では,ボタンをマジックテープ部分に合わせて貼る活動は,指導開始当初より理解できていた。しかし,「着替えコーナーのボタンを取る」(誤反応24試行中18回),「マーキング部分を持つ」(誤反応24試行中11回)の活動においては,ほぼ毎回,プロンプトが必要であった。「マーキング部分を持つ」ことに関しては,教師の立つ位置をHくんの真後ろに変更したことで,逸脱行動が軽減した。しかし,「着替えコーナーのボタンを取る」に関しては,ボタンを貼るという活動自体を意識させることが【step1】では難しく感じた。また11月中旬より得点にも変化がなくなり,課題としては,「着替えコーナーのボタンを取る」を残し, 目標は未達成であったが,11月21日で中止することにした。
 【step2】では,「カバンから体操服を取り出す」,「体操服のマジックテープ部分を探し,見つける」活動を新たに加えた。「カバンから体操服を取り出す」に関しては,【step1】から指導していたため,一連の活動として定着していた。「体操服のマジックテープ部分を探し,見つける」に関しては,探そうとする行動が見られず,身体的プロンプトが続いた。そのため12月より,次のように対応した。\x{2460}体操服のマジックテープ部分の1カ所を見える状態にしておく。\x{2461}Hくんがカバンから取り出した後,マジックテープ部分をチラッと見せる。\x{2460}\x{2461}の活動を通して,探すという行動が定着し,1月13日に目標を達成した。

考察
 【step1】の課題となった「着替えコーナーのボタンを取る」が定着しなかった理由として,Hくんの指導前の着替えの方法と関係があったと考えられる。指導前は,体操服が着やすいように,教師がマーキング面を表にして机上に広げたものをそのまま着ていた。そのため,【step1】で教師が机上に広げてある状態が,指導前の体操服を広げられた状態と同じであったため,Hくんにとって,着替えコーナーのボタンを取って貼るという活動の必要性がなかったと考えられる。
 【step2】の「体操服のマジックテープ部分を探し,見つける」では,指導当初,マジックテープ部分を探そうという行動が見られず,身体的プロンプトが続いた。そのため,\x{2460}体操服のマジックテープ部分の1カ所を見える状態にしておく。\x{2461}Hくんがカバンから取り出した後,マジックテープ部分をチラッと見せる。という方法で取り組んだ。\x{2460}では,見えている部分にボタンを貼った後,もう1カ所を探そうとする行動が見られ始めた。その後,カバンから取りだしたままの状態でも,体操服を自分で広げるなどマジックテープ部分を探そうとするようになった。しかし見つけるまでには至らず,途中で諦めていまい適当に貼るようになったため,\x{2461}の方法で取り組んだ。Hくんはチラッと見えたヒントを手がかりに諦めることなく探すようになった。これは,Hくんが必ずマジックテープ部分があることが理解できたからではないかと考える。すると,12月中旬にはヒントがなくても体操服を広げたり,ひっくり返したりと意欲的に探す姿が見られ始め,見つけることができるようになった。それと同時に,【step1】の課題であった「着替えコーナーのボタンを取る」ということを忘れることがなくなった。このことは「探す」という活動を通して,マーキングがあるということをHくんが意識し始めたからではないだろうか。また,マーキング部分を持ってから着るまでの時間が【step1】よりもはるかに短縮され,逸脱行動がほとんど見られなくなった。これは,Hくんが取る→探す→貼るの活動を通じて,体操服に付けられた2カ所のマーキングがHくんにとって意味のあるマーキングとなったからであると考えられる。
 子どもの行動をよく観察し,その子どもに合わせたスモールステップの大切さとそれに応えてくれる子どもの頑張りを改めて実感した。今後,体操服のズボンの着替えにも取り組んでいきたい。

【step1】ボタンをマジックテープ部分に合わせて貼り,その部分を持って着る条件
A:先行条件 B:行動 C:結果
体操服の着替え
(教師が体操服を広げた時)
《正反応》
a)ボタンをマジックテープ部分に合わせて貼り,その部分を持って体操服を正しく着ることができる。

《誤反応》
b)ボタンを貼らずに,着ようとする。
c)ボタンを貼るがマジックテープ部分からずれている。
d)無反応
《正反応》
a)「上手にできたね」とほめる。

《誤反応》
b)マーキングを指さす。反応がない場合は,一緒に貼る。
c)「ここだよ。」と声をかける。
d)声かけ+指さしで着替えを促す。

【step2】カバンから体操服を取り出し,マジックテープ部分を探してボタンを貼る条件
A:先行条件 B:行動 C:結果
体操服の着替え
(カバンから取り出した時)
《正反応》
a)体操服をカバンから取り出し,体操服のマジックテープ部分を探し,ボタンを貼ることができる。

《誤反応》
b)体操服をカバンから取り出すが,マジックテープ部分を探さない。
c)マジックテープ部分を探すが,見つけられない。
d)無反応
《正反応》
a)「上手にできたね」とほめる。

《誤反応》
b)着替えコーナーにあるボタンを指さす。
c)本児の手を取り,一緒に探す。
d)声かけ+指さしで促し,できない場合は本児と一緒に体操服を広げる


第一系列のタイトル: Step1
Intervention1: 指導手続き(1)  
第二系列のタイトル: Step2
Intervention2: 指導手続き2  
記入日時 2005/10/04/17:26:05  No.46
記入者 45  E-Mail

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