2003-05



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視覚的構造化と言語賞賛により片付けができるようになった事例
対象児のプロフィール
E君 小学部2年男児
PEP−R:3歳4ヶ月
肥満

指導者
O.I

長期目標
タイマーがなったら,遊びを終了し,片づけをして,次の活動をする(教室に戻る)ことができる。

短期目標
教師の声かけによって,遊びを終了し,片づけをして,次の活動をする(教室に戻る)ことができる。

指導目標(標的行動とこれを選んだ理由)
教師の声かけによって,片づけをすることができる。

標的行動
指導目標と同じ。

標的行動を選択した理由
 4月当初より、E君の生活の様子を観察してみて,「片付ける」という習慣は全くと言っていいほどなく,その必要性を感じていないことが分かった。しかし,E君の発達年齢や生活パターン、今後のことを考慮すると,「何をどこに片付ければ良いのか」が理解できれば,習慣として,しっかり身に付くと考えた。「片付ける」ことの利便さ(片づいている方が、この次に同じ活動を行う際に視覚的にも分かりやすく、スムーズに活動できる)を指導を通して,教えていきたいと思う。

指導目標に関する対象児の実態(ベースライン)
・児童施設に入所しているため,帰省による影響で、週末 や週明けには不安定になりやすく,指示を受け入れにく くなることもある。
・簡単な決まりやルールは理解できていると思われる。安 定している時には,こちらからの働きかけにも落ち着い て対応でき,確実に守ることもできる。しかし、時と場 合,状況によって,崩れやすい。
・肥満のため,自分の意に反して,動くのは好まない。
・否定や注意、困難場面に弱く,緊張しやすい。

ベースライン
遊びの終了を伝える声かけのみを行い,片付ける点については,特に指導はしなかった。

般化場面
(1)主として指導に当たっている教師以外の教師が声か   けをしても,片付けをすることができる。
(2)他のクラスや多目的ホールなどにおいても,声かけ   で片付けることができる。
(3)家庭や入所している施設でも,片づけができる。

指導場面
1日4回(登校後,課題終了後,朝の運動終了後,昼休みの時間)

指導手続
1)遊びを終了した際に,遊具を出しっぱなしにして,そ の場から離れようとした時には,「◯◯(遊具名)はど うしようか?」と声をかける
・トークンシステムを利用。片付けができたら、シール  を1個貼り10個たまったら、ごほうびのお菓子がも  らえる。
 ・片づけをしようとしない時には,更に「片づけしよう  ね」と声をかける。
2)教室のプレイコーナー本棚を設置。また、セラピーボ  ール等の遊具の片付け場所を写真を貼って分かりやす  く示した。
 ・片づけをしようとしない時には,「片づけしようね」  と声をかける。

教材教具など
トークン表,シール、ごほうび

達成基準
声かけで片づけができる割合が80%以上,5日間続いたら,達成とする。

記録の取り方(般化場面と指導場面)
指導場面の記録の取り方
遊び場所・遊びの種類・指導者・終了のきっかけ(声かけか自発か)・片づけのきっかけ(声かけか自発か)の5点を毎日ほぼ4回記録した。

般化場面の記録の取り方
達成基準に達した後で、上述の3項目について実施予定。

指導期間
2003年9月〜2003年11月

結果
指導開始から2ヶ月後,指導手続き2)を始めた直後に変化が見られる。達成率が100%に達した後は,安定した成果を上げることができ,一気に達成することができた。
 般化場面での指導としては,指導者以外の教師が声かけをしても確実に片づけをすることができている。また,遊びの場所が教室以外の場所であっても,自分が遊具をどこから持ち出したかをしっかり覚えており,落ち着いて対応できている。施設では,(遊びに)集中しすぎていると,なかなか終了が難しいこともあるが,次の活動を知らせると,終了し,片づけられることが多い,という報告を受けている。
 指導目標の達成後,声かけをタイマーに変えて指導を行ったところ,即,達成できており,スムーズに活用できている。 

考察
今回のケース研究では,まず,指導手続き1の段階でトークンシステムを利用。シールが10個たまったら,ごほうび(お菓子)を渡すようにして指導を進めてきたが,なかなか成果があらわれなかった。
 そこで,記録を見直し,遊具の片づけに関してDくんがつまずいている点を絞り込むことにした。その結果をもとに,指導手続き2を開始。教室のプレイコーナーの環境を変え、遊具の片づけ場所を明確に示したことにより,開始直後から「片づけをしよう」という声かけに対して,かなりスムーズに対応できるようになる。プレイコーナーを見渡した時、「『何を』『どこに』片づけるのか」が一目で分かるため、Dくんの苛立ちを増長させることが少なくなったためと思われる。また,同時に他児の片づけの指導が始まったことで,他児が片づけをしている様子や教師に賞賛されている様子を見て刺激になったようにも思われる。
 食べ物への興味が大変強いDくんの実態からして,ごほうび(お菓子)の効果を大いに期待していたのだが,指導を進めるにつれて,ごほうびの内容が好子になっていないのでは?と考えるようになった。もともと理解力・認知力もあり,きまりやルールを守ることもできる児童であり,環境さえ整っていれば充分に対応でき得るという点において,早い段階で検討,確認すべきであった。また,前述のように,他児の片づけの指導→教師からの賞賛に刺激を受けたのでは?という点についても,シールをためてお菓子をもらうよりも,その時思い切り誉めてもらうことの方がうれしかったのでは?と考えられる。主に施設で生活しているDくんにすれば,言葉による賞賛は大変効果的であり、(自分もできる)という自信に強く結びついていたのかもしれない。
 学校内においては,環境さえ整っていれば,Dくんの片づけ→次の活動への移行は,ほぼ確実にできると思われる。今後,施設や家庭においても環境を整理し,Dくんにとって分かりやすい生活空間の提供を望みたい。そして,片づけができた時には,必ずほめてあげてほしいと願っている。


記入日時 2006/01/29/17:05:03  No.97
記入者 管理者  E-Mail

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